衛生的な手洗いは、食品衛生の基本です。従業員への食品衛生教育においても、衛生的な手洗いの意義や手順は、必須の教育内容といえます。そこで今回は、衛生的な手洗いの定義や手順などの基本的な事項の確認と共に、従業員が現場で実施を徹底するための効果的な教育手法をご紹介します。
手洗いの種類
日頃何気なく行う手洗い。実は手洗いにもいくつかの種類があるのはご存じですか?
日常的手洗い
外出先からの帰宅時や食事前などの日常生活で行う石けんを用いた手洗い方法です。通過菌(一過性細菌叢)を洗い流し除菌することが目的の手洗いで、食中毒予防や感染症対策にも有効です。
衛生的手洗い
目に見える汚れだけでなく、細菌や微生物を除去するためにアルコール擦式消毒薬や、流水と抗菌性石けんを用いる手洗い方法です。
主に医療従事者が医療行為や介護の前後で行うほか、食品取扱者などに求められます。
特に医療現場ではWHOが2009年に公開した「医療における手指衛生についてのガイドライン」が重要な感染対策として実行を推奨されており、より厳格な手洗いが求められています。
また、食品製造工場や飲食店では多くの人の体内に入る食品を扱うことから影響も大きく、重大な事故に繋がる恐れもあります。そのため従業員一人ひとりの徹底した対策が必要です。
手術時手洗い
手術時手洗いは、手術を行うスタッフが、専用の方法と薬剤を使って行う手洗いです。
手術では体の内部に手を入れる為、もし手術用のゴム手袋が破れても、菌が体に入らないよう、通過菌だけでなく常在菌も極力除菌する手洗い方法が必要です。通常であれば常在菌のような毒性が低い菌は感染原因になりませんが、手術時は患者が易感染状態にあるため、より厳格な基準に合わせて手洗いをしなければなりません。
手術時手洗いは大きく2つに分けられ、ラビング法(ウォーターレス法)とスクラブ剤を用いた消毒法(スクラブ法、揉み洗い法、ツーステージ法)がありますが、ラビング法とスクラブ剤を用いた消毒法には優位差はないといわれています。(深田民人.手術時手洗い法に対するラビング法とスクラビング法による手術部位感染発生率の比較.日本外科感染症学会雑誌 2006;3(4):515-19.)
従来のスクラブ剤を用いた消毒法と比べてラビング法は手洗い時間の短縮やコスト削減にも繋がることから、徐々に普及していると言われています。
今回は、食品に関わる施設で最も取り入れられている「衛生的手洗い」について解説していきます。
衛生的な手洗いとは
食品衛生において、手洗いはとても重要です。「食品衛生は、手洗いに始まって、手洗いに終わる」と言われるように、食中毒の防止は手洗いが第一となります。
食中毒予防の三原則は「つけない、増やさない、やっつける」ですが、一つ目の「つけない」ことが最も重要であり、食中毒予防の基本となります。食中毒の原因となる病原微生物の汚染ルートの一つは人の手を介することにあります。
人の手は、汚染したもの、清潔なものあらゆるものを扱う万能な道具です。さまざまなものに触れることで、手に微生物が付着します。汚染物から病原微生物が付着し、その手で他の物を汚染してしまうなど、知らぬ間に食中毒を起す病原微生物の運び屋にもなるのです。
なので、食品を扱うすべての方は手に付いた微生物を、手洗いによって洗い落とし、消毒をしないといけません。
衛生的手洗いとは?
衛生的手洗いとは、手指に付着する通過菌を除去するための手洗い方法です。食品取扱者や、医療従事者が行う手洗いで、石けんで汚れを落とし、流水ですすぎ、乾燥させた後にアルコール消毒による除菌まですることで感染予防に大きな効果があります。
手洗い「発明」の歴史
今では感染症予防や衛生管理の基本ともいえる手洗いですが、衛生状態を保つための手洗いはいつ、どこで「発明」されたかご存じでしょうか。
実は、こうした手洗いが発明されたのは1847年。まだ200年も経っていません。
手洗いを発明したのはウィーンのゼンメルワイス博士。当時彼の働く病院では出産時の発熱で死亡する妊婦が10%近くもいました。
しかし、別の病院では妊婦の死亡率がより低いことに気づいたゼンメルワイス博士は、自分の医院とその医院の違いを探し続け、ついに「手についた微粒子」つまり細菌や微生物が原因であると突き止めたのです。
そして、ゼンメルワイス博士は手についた微粒子を落とす方法として、塩素による手洗いと消毒を提唱。その後数十年かけて手洗いが各感染症に対して予防効果があると立証され、さまざまな手洗い方法が発明されるに至りました。
衛生的手洗いが必要な職業
このように「発明」された手洗いは、様々な現場で実施されています。
主に使用されるのは、次のような施設・職業です。
医療機関/医療従事者、福祉施設
院内感染や医療関連感染を予防するために行われます。病原菌によって皮膚のどの階層にいるか、
どの薬剤に耐性があるかが異なるため、処置や手についたと疑われる病原菌によって
どの方法で手洗いを行うかが細かく分類されています。
食品取扱施設(工場・給食施設・飲食店など)
食中毒予防の三原則「つけない・増やさない・やっつける」のうち、衛生的手洗いは
「つけない」(病原性微生物による食品汚染) のために行われます。
外から入ってきたとき、髪の毛や顔を触った後、トイレに行った後、食中毒の原因となる病原性微生物に汚染されている可能性の高い原材料(生肉や生魚など)を扱った後、生ごみなどの汚染物質に触れた後、加熱済み食品(RTE食品)を扱う前は必ず衛生的手洗いを行わないといけません。
衛生的手洗いの手順
衛生的手洗いの手順と、行うタイミングを確認していきましょう。
衛生的手洗いの手順
手を洗う前に、爪を短く切りそろえ、腕時計や指輪を外し、マニキュアを取ります。また、手指に傷がないか等を確認し、傷がある場合は原則として調理作業に従事しないのが望ましいとされていますが、現場のルールに従ってください。
1.流水で手を洗う
2.洗浄剤を手に取りよく泡立てる
3.手のひら、指の腹面を洗う
4.手の甲、指の背を洗う
5.指の間(側面)、股(付け根)を洗う
6.親指・拇指球(親指の付け根のふくらみ)を洗う
7.指先を洗う
8.手首を洗う
9.洗浄剤を十分な流水でよく洗い流す
10.手を拭き乾燥させる(タオル等の共用はしないこと)
11.アルコールによる消毒(爪下・爪周辺に直接かけた後、手指全体によく擦り込む)
出典:公益社団法人日本食品衛生協会「基本の手洗い手順」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000076156.pdf
2~9までを繰り返す「2回洗い」が効果的であるとされています。
衛生的手洗いを行うタイミング
衛生的な手洗いを行うのは、主に次のタイミングが適切といわれています。
・トイレの後
・調理場に入る前
・微生物の汚染源となるおそれのある食品に触れた後
・以後に加熱工程のない食品に触れる前
・盛り付け作業の前
・廃棄物を処理した後
・汚染された器具機材を扱った後
・いけすや観賞用の水槽を扱った後
・盲導犬等を含む動物に触れた後
など
この衛生的な手洗いの方法や適切なタイミングについて、すべての従業員に実施徹底させることはむずかしい現状があります。そのため、食品を取り扱う現場教育において、教育や周知について力が注がれています。
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衛生的な手洗いは、食中毒を予防するために重要な基本事項です。実施徹底のためには、より効果的な教育手法が求められます。
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衛生的な手洗いも含めた食品安全衛生の従業員教育のポイントは“なぜそれをしないといけないのか?”“なにが問題なのか?”等の、なぜ?なに?を伝えるところにあります。そうすることで従業員が教育を受けた際に、確実に重要なポイントを理解し、自分ごと化して自ら実践するようになる確率が上がります。しかし、テキスト配布や呼びかけだけの教育では、学習意欲のない従業員に対しては効果が薄く、正しく理解してもらうことすらむずかしいものです。
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まとめ
食中毒は、食品を取り扱うすべての現場にとって非常に重大なリスクです。その基本的な予防策として重要な衛生的な手洗いは、各従業員が自ら意識的に実施徹底を行うことが欠かせません。
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