近年、物流需要の高まりを背景に、物流倉庫などの物流拠点の数が増えていると言われています。そうした中、物流倉庫では、労働中の事故や労働災害が多発している現状があります。
今回は、物流倉庫での事故を予防する必要性とともに、物流倉庫でよくある事故のほか、物流倉庫における事故対策をご紹介します。
物流倉庫での事故を予防する必要性
まず、物流倉庫で事故がどのくらい増加しているかデータで確認してみましょう。
中央労働災害防止協会が発表している「労働災害分析データ」によれば、倉庫業における令和4年の災害発生件数は821件であり、前年の781件から40件増加しました。ここ数年のデータを見ると、件数は増加の一途をたどっています。
事故の型別発生状況を見てみると、転倒災害が年々増加しており、特に令和4年で急増しています。また、年齢別発生状況については50~59歳が最も多く、次いで40~49歳、60歳以上と続きます。特に令和4年には60歳以上の事故が急増していました。
こうした状況を受け、物流倉庫を運営する企業は十分な事故の予防策を講じる必要があります。転倒災害や高齢者の事故の増加といった傾向をよく知り、対策を講じることが重要です。
また、事故発生件数の高さから、物流倉庫では日々の業務の中で事故に至らないまでも、「ヒヤリハット」と呼ばれる事象が多く発生することが想定されます。ヒヤリハットとは、業務中に「ヒヤッとした」「ハッとした」と感じるような危険な状況が発生したものの、幸いにも災害には至らなかった事象を指します。
一見すると、ヒヤリハットは「大事に至らなくてよかった」と安心して終わってしまいがちですが、決して軽視できない重要な警告であり、重大な事故を未然に防ぐための貴重な情報源です。
物流倉庫では、その事故件数の高さから、重大な事故発生を防ぐためにもしっかりとヒヤリハット活動を実施し事故を未然に防ぐことが重要です。
物流倉庫でよくある事故の例
具体的には、どのような事故が物流倉庫で発生しているのでしょうか。よくある事故の例を見ていきましょう。
墜落・転落災害
【事故例】
・トラックの積み荷上に乗って作業している最中に、シートを引っ張り、その反動で墜落。
・トラックの荷台から意図的に地面に飛び降りた際、バランスを崩して負傷。
トラックから荷積みや荷下ろしをする際に、荷台やテールリフトに労働者が乗って作業することがありますが、その際に、何かの拍子に墜落してしまうといった事故が起きています。
フォークリフトが関係する災害
フォークリフトは物流業や製造業で重要な役割を果たしており、日本国内でも広く利用されていますが、効率的な物流管理を支える一方で、事故のリスクも増加しています。
【事故例】
・操作ミスによる接触事故
フォークリフトの運転席には、ハンドル以外に複数のレバーがあり、操作に不慣れな作業者や技能に不安がある作業者はミスを起こしやすいです。特にフォークの上下や角度調整の際に、誤った操作をすると、荷物や作業者との接触事故を引き起こすことがあります。
・安全確認不足による追突事故
フォークリフトでは、発進時や後退時の安全確認を怠ることにより、追突事故が発生するケースが多いです。他の作業員を挟んでしまう、巻き込んでしまうといった重大な事故に繋がることがあり、死亡事故の主な原因ともなっています。
・転倒事故
フォークリフトでは、荷役を高く持ち上げたままの移動や、方向転換時にスピードを出し過ぎることで、バランスを崩して転倒する事故が発生します。転倒時には作業員が車外に投げ出されフォークリフトの下敷きになる危険性が高く、重大な事故に繋がる可能性があります。
また、安全意識の乏しい作業員による整備不足や危険運転も転倒の要因となりますのでフォークリフト作業従事者には十分な教育が必要です。
フォークリフトとの接触による災害
【事故例】
・前進もしくは後進してきたフォークリフトに追突される。
トラックの荷積みや荷下ろしや荷物の運搬に用いられる車両、フォークリフトに追突されるなどの接触災害も多く発生しています。
【関連コラム】
フォークリフト安全教育|重要性と社内で実施する際のポイント
ロールボックスパレット(カゴ車・カゴ台車)が関係する災害
【事故例】
・倒れたロールボックスパレットに巻き込まれてしまい、重大な事故に。
ロールの付いたボックスパレットで荷物を運搬したり、移動させたりする際に昇降版のずれやキャスターの傾きによる墜落や転落を起こすケースが多いといわれています。
・ロールボックスパレット取り卸し作業中の転倒
トラックからロールボックスパレットを取り卸す際、ホームとの高さの調整が十分でなく、渡り板の傾斜が急なまま作業を実施したことで、作業者が足を滑らせ転倒する事故が発生
運送事業における労働災害の内、約7割が荷役作業時に発生しています。
また、荷役作業時の災害の中でもロールボックスパレット(カゴ車・カゴ台車)の取扱い中の災害が多発しているため、実際の事故例から学び対策を講じておくことが重要です。
転倒災害
・重量物を手で運んでいる最中に通路の段差に気付かずに転倒。
労働者が荷物を手で運んでいる最中に、転倒する事例は多く発生しています。重量の大きいものや複数の荷物を同時に運んでいるときには転倒するリスクが高まり、最悪の場合、骨折などの大きなけがに繋がります。
腰痛を起こす災害
・地面に置かれた荷物を持ち上げて机の上に置く動作のときに腰痛に。
同様に手作業で荷物を運ぶ際に、重量物を持ち上げたり下ろしたりした反動や無理な動作などによる腰痛災害も多く発生しています。
熱中症による災害
・倉庫内での荷下ろし作業後に、熱中症による多臓器不全により死亡。
被災者は輸送用トラックのロールボックスパレットからコンベアに荷物を下ろす作業を実施した後、休憩後に歩行が困難となり、熱中症を発症。
作業場は屋内で空調管理が行われており、飲料水サーバーも近くに設置されていましたが、熱中症を発症することもございます。十分に気を付けることが重要です。
物流倉庫における事故対策
このような物流倉庫でよく起きる事故それぞれについての対策をご紹介します。
墜落・転落災害への対策
労働安全衛生規則第518条・519条では、事業者に対して高さ2m以上の箇所における墜落防止措置を義務付けています。墜落・転落災害の防止には、常に安定した足場で作業を行わせるほか、荷台の乗り降りは昇降設備を使用することが挙げられます。
フォークリフトが関係する災害への対策
・指差し確認・指差し呼称の徹底
フォークリフトの操作においては、指差し確認や呼称確認を徹底することが重要です。
これにより、操作前に異常を発見する機会を増やし、安全性を高めることができます。
特に停止状態から動き出す前には必ず指差し確認や呼称確認を行うよう義務付け、作業者に習慣づけることが大切です。
・フォークリフトと歩行者導線を分ける
フォークリフトとの接触事故を防ぐには、あらかじめ稼働時間、作業計画を定めておき、フォークリフトと歩行者の動線が分離されていることを確認することが重要です。
また歩行者については安全通路や横断帯を設け、床面に塗装することで対策できます。フォークリフトの作業範囲を立ち入り禁止エリアとし、パイロン(カラーコーン)で区分けすることも一つの方法です。
・危険予知トレーニング(KYT)や講習の実施
危険予知トレーニングを通じて、フォークリフト作業に潜む危険なシーンや環境を事前に把握し、安全意識を高めます。作業者全員で危険個所や危険シーンを共有し、作業ルールを徹底することで、「この程度であれば安全だろう」といった思い込みを排除し、常に危険を予知する意識を持つことが重要です。
フォークリフトとの接触による災害への対策
フォークリフトとの接触事故を防ぐには、あらかじめ作業計画を定めておき、フォークリフトと歩行者の動線が分離されていることを確認することが重要です。
また歩行者については安全通路や横断帯を設け、床面に塗装することで対策できます。フォークリフトの作業範囲を立ち入り禁止エリアとし、パイロン(カラーコーン)で区分けすることも一つの方法です。
ロールボックスパレットが関係する災害への対策
ロールボックスパレット使用前の対策
・使用時は必ずキャスターストッパーを利用すること
わずかな傾きや風によりパレットが勝手に走り出すことがあります。ロールボックスパレットは人が支えられる重さではないため、キャスターストッパーの徹底は重大な災害対策になります。
また、運搬時は片手ではなく必ず両手で持って運搬しましょう。
・作業にふさわしい装備をすること
万が一ロールボックスパレットが転倒した際の保護だけではなく、安全に操作ができる装備をしておくことが必要です。作業者は安全靴やヘルメット、手袋を身につけましょう。
・倒れそうになった際の心構え
ロールボックスパレットは人が支えられる重さではないため、万が一倒れそうになった場合は身を守ることを優先し、無理せず逃げましょう。
ロールボックスパレット作業時の対策
・段差を通過する際は複数人で作業を実施すること
ロールボックスパレットによる事故は、わずかな段差に引っかかることで生じやすいことから、わずかであっても段差であっても取り除くことが重要です。やむを得ず段差を通過する場合は、複数人で作業を行い、十分に転倒防止に努めることが大切です。
・運搬する荷物量の調整をすること
ぶつかりや転倒を防ぐため、運搬する商品や機器のサイズは、前方の視界を遮らない程度に留めましょう。場合によっては作業指揮者を配置し、指示のもとでロールボックスパレットの運搬作業を安全に行うことが求められます。
・専用持ち手を設置すること
ロールボックスパレットは台車のような持ち手が付きのものがないため、狭い通路での移動時に壁と扉の間に手が挟まることや、ぶつかるといった事故が想定されます。
専用の持ち手を設置することで、持ち手を引いて運搬が可能になり、そういった挟まれやぶつかりを防ぐことができます。
転倒災害への対策
転倒災害を防ぐには、労働者が荷物を持って頻繁に行き来する通路は段差を解消します。常に整理整頓し、床に不要なものを置かないことも徹底することが大切です。
【関連コラム】
転倒災害とは?労働安全衛生教育を効果的に行う手法
腰痛を起こす災害への対策
腰痛予防については、厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」を参考に、組織的に予防策を実施しましょう。腰部に負担がかかる作業についてはできるだけ自動化や省力化が望ましく、労働者に対しては作業姿勢や動作について腰に負担がかかりにくい方法を留意させることが挙げられます。
KYT(危険予知トレーニング)の実施
物流倉庫における事故防止対策として、KYT(危険予知トレーニング)の実施が有効です。
KYTは、作業現場に潜む危険要因を発見し、解決する能力を高めるトレーニング手法で、労働災害の未然防止に寄与します。
具体的には、作業者全員で危険箇所の洗い出しを行い、指差呼称による行動目標の顕在化を通じて、従業員の危険意識を向上させます。また、職場環境の改善や問題解決能力の向上にも寄与し、結果的に安全で明るい職場風土を築くことができます。
これにより、安全な労働環境が構築され、事故発生率の低下が期待されます。
リスクアセスメント対策の実施
物流倉庫では重機の操作や高所作業、荷物の移動など、さまざまな危険が潜んでいます。
リスクアセスメント対策とは、潜在的な危険性や有害性を特定し、それらを評価・除去または低減する方法であり、企業はリスクアセスメント対策を通して事故発生リスクを特定し、優先度を設定することで、適切な安全対策を講じることができます。
例えば、重機の操作における安全教育の徹底や、高所作業時の安全装備の強化などが考えられます。
また、リスクアセスメントは職場全体で行うことで、従業員一人ひとりの安全意識を高める効果もございます。全員が協力して危険を認識し、声を掛け合うことで、安全文化が職場に浸透し、事故防止につながります。
まとめ
物流倉庫は需要が高まっていることから、倉庫内では頻繁に人や荷物が行き来していることでしょう。労働災害は未然に防ぐことができます。ぜひ取り組みに役立ててください。また、労働災害を防止するには、従業員への労働安全衛生教育も重要です。
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