労働災害の中でも、意外と多発しているのが「転倒災害」です。職場におけるさまざまな原因によって起こるこの転倒災害ですが、労働者の高齢化にも一因があるようです。高齢者が転倒した場合、骨の強度の減少などの事由により骨折などのリスクが若年層の労働者に比べて高くなります。職場における転倒災害の発生を減少させるための取り組みは重要です。

中でも労働安全衛生教育を徹底し、従業員が自ら予防のために取り組む体制づくりが欠かせません。

今回は、転倒災害とは何か、そして転倒災害防止策、転倒災害防止を含む従業員教育の効果的な手法をご紹介します。

転倒災害とは

転倒災害とは、転倒による労働災害のことをいいます。労働災害とは、業務中や通勤中、もしくは業務や通勤が原因となって被った負傷、疾病、死亡などのことです。労働災害は、業務中発生する「業務災害」と通勤中に発生する「通勤災害」に分けられています。

いずれの場合においても転倒して災害を被った際は転倒災害に分類されます。墜落・転落、腰痛、はさまれ・巻き込まれなどの労働災害がある中で、転倒災害は全体の4分の1を占め、最も件数が多い労働災害です。

労働者の高齢化も転倒災害が増加している要因の一つといわれており、高齢化が進む中、深刻な労働災害として注視されています。

労働災害の分類における「転倒」とは?

労働災害の分類上における「転倒」は、人がほぼ同じ平面上で、つまずいたり、滑ったりして転び、倒れることを言います。車両系の機械などと一緒に転倒した場合も「転倒」に含まれますが、交通事故は除きます。また、感電して倒れた場合には「転倒」には含まれず、「感電」として分類されます。

転倒災害の典型的なパターン

転倒災害の典型的なパターンは、大きく分けて「滑り」「つまずき」「踏み外し」の3つといわれています。「滑り」は濡れた床で滑ることによる転倒、「つまずき」は台車などに足を引っかけてしまうことによる転倒、「踏み外し」は階段や段差などを踏み外してしまうことによる転倒です。

転倒災害の事例

転倒災害の主なパターンごとに、どのような発生事例があるかをご紹介します。

・滑り
水をはじきやすい床素材の場合、少しの雨などでも容易に転倒に繋がります。具体的には鉄や大理石、タイルなどの床です。
また、労働者が正しく安全靴を着用していなかったり、長年の使用で底がすり減り、耐滑性が損なわれた靴を着用していたりすることによる滑りも発生しております。

・つまずき
作業スペースの中に凹凸や段差がある場合によく発生します。階段のような大きな段差でなくとも、電気コードやLANケーブルなどの配線を隠すプラスチックのカバーにつまずく事例も多く発生しております。特に高齢者の方は、自分が思っているほど足が上がっていないため、物につまずいて転倒する事が多いようです。
また、床に放置されていた段ボールや商品につまずく事例も多く見られますし、大きな荷物を持っていて、足元の視界が悪い状態でつまずく事例も多発しております。

・踏み外し
つまずきの事例でもご紹介しましたが、大きな荷物を抱え、足元の視界が悪い状態で良く発生するのが踏み外しです。段差がそこにあることに気が付かない、段差の正確な高さを把握できていないことで踏み外しは発生します。
近年では大きな荷物だけでなく、歩きスマホで段差に気づかず踏み外すような事例も見られます。

労災の死傷者数は転倒が最大

厚生労働省の統計によると、令和3(2021)年の休業4日以上の事故の型別労働災害死傷者数は、新型コロナウイルス感染症への罹患を除くと、最多は転倒災害という調査結果が出ています(33,672名、約23%。出典:厚生労働省 令和3年労働災害発生状況)。

転倒災害の発生件数は増加傾向にあり、2011年には25,000名程度であった転倒災害の死傷者数は、2021年の33,672名と、約8,000名近く増加しているのです。労働災害死傷者数における転倒災害の割合も、2009年以降20%を下回ることがなく、転倒災害がいかに身近な災害であり、注意が必要なのかを実感できるのではないでしょうか。

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転倒災害防止策

どのような職場においても、転倒災害防止のための取り組みは欠かせません。特に転倒災害が起きたことがある職場では、再発防止策の実施が必要です。転倒災害防止策には、主に職場環境の改善と従業員教育が重要になってきます。

転倒災害防止策の主なものを取り上げます。

転倒しにくい作業方法で業務を行う

常に時間に余裕をもって行動するようにする、急ぐ必要があるときもあせらず落ち着いて行動する、滑りやすい場所では歩幅を小さくする、照明を用いて適切な明るさを確保してものにつまずかないようにするなど、転倒しにくい作業方法を心がけます。

歩き方の見直しも大切です。すり足で歩を進めると歩幅が狭くなり、転倒しやすくなるといわれていますので、歩幅を広げ、つま先でしっかりと地面を蹴ってかかとから着地すると転倒しにくくなります。

5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底

滑りにくい靴の提供、転倒防止に配慮した床の設置など設備面の対策に加え、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底する管理面の対策など、あらかじめ転倒しにくい環境づくりを行うことも重要です。

整理・整頓・清掃・清潔・しつけの「5S」を徹底することで、歩行場所に物が放置されている、床面の水、油、粉類等の汚れが取り除かれていない、床面の凹凸、段差等の問題を解消することが出来ます。徹底していくには一人ひとりの意識付けが求められます。標語の作成や、5Sのイラストポスターといった従来の施策だけでなく、職場として労働安全衛生教育の機会を設け、実施していくことが、5Sの徹底、従業員の安全に繋がります。

転倒災害対策の事例

転倒災害の主なパターンごとに、転倒防止の具体的事例をご紹介します。

・滑り
床が滑りやすい素材の場合、摩擦力を上げることで対策できます。そのため、凹凸がついている素材や、水を吸いやすい素材が床の素材には最適です。カーペットやゴムシートを敷くのも良いでしょう。(食品を扱う現場では微生物や害虫の発生等衛生上の問題がある場所では使用はできません)
また、労働者の安全靴について、指定のものを正しく履いているかをチェックしましょう。そこがすり減った安全靴を履き続けないよう、靴の交換サイクルを決めることも有効です。

・つまずき
まず「床にものを置かない」を徹底します。納品物やすぐ使うものほど床に置かれがちですが、一時保管用のスペースを決めておくと、床に放置される荷物を減らすことができます。
目に留まりにくい段差はトラ柄テープで目立つようにする、スロープを設置し段差をなくすことでも対策が可能です。また、高齢者の方にもやさしい環境づくりも大切です。
床にある配線は壁に沿って貼り直します。なるべく足がはみ出しにくい机・いす・パーテーションの導入も検討しましょう。

・踏み外し
こちらもつまずき同様、視認性の悪い段差にトラ柄テープを貼る、スロープを設置する対策が有効です。
古い建物の場合は段差の距離が均一ではない危ない階段が残っている場合があります。そうした危険な階段が施設内に無いか確認しておくことも大切です。
また、大きな荷物の運搬には台車を活用するルールを徹底しましょう。頻繁に大きな荷物を運搬するエリアには、専用の台車を設置し、エレベーター等を必ず使用するルールにすることも有効です。
当然、歩きスマホは危険です。慣れた作業スペースや社内でも禁止を徹底しましょう。

「エイジフレンドリーガイドライン」の活用

厚生労働省が令和2年3月に策定した「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」を活用しましょう。厚生労働省では働く高齢者の特性に配慮した職場環境への改善を推進しており、高齢者を使用、もしくは今後使用する予定の事業場で、事業者と労働者に求められる取組を具体的に示したものです。

主に5つの取組、「安全衛生管理体制の確立」「職場環境の改善」「高年齢労働者の健康や体力の状況の把握」「高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応」「安全衛生教育」が示されています。

特に職場環境の改善においては身体機能の低下を補う設備・装置の導入、高年齢労働者の特性を考慮した作業管理といったハード面、ソフト面の対策が具体的に示されていますので、参考にすることができます。また、加齢に伴う運動能力の変化を理解して“転倒防止体操”などの対策を行うことで、転倒する確率を減らすことが可能になります。

従業員への労働安全衛生教育を行う

従業員教育は、5Sのうち「しつけ」に該当するものです。

職場においてただ作業方法を変更したり、設備的な改善を行ったりするだけでは、十分に災害防止効果を発揮できません。そこで重要になってくるのが、従業員への労働安全衛生教育です。

教育をしなければ、何が危険なのか?作業手順やルールはなぜ出来たのか?その理由が理解できないため、重要性を認知して行動することができません。効果的な教育を行えば、従業員の安全行動も定着しやすくなり、加えて危険予知能力や危険回避能力も身に着けることが可能です。もし従業員の不安全行動が減少し、対処、監視、予測、学習する能力が高まると労働災害の発生確率は減少します。そのためにも従業員教育は不可欠なのです。

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いくら教育を実施しても、従業員自ら転倒災害の防止のために意識的に行動するようにならなければ、転倒災害の減少にはつながりません。

教育効果を出すためには、たとえ学ぶ意欲のない従業員であっても、学びやすい教育方法を採用することが重要になってきます。

そこでおすすめなのが、労働安全衛生に関するeラーニング・動画コンテンツを提供する、ラキールの労働安全衛生教育動画サービス「LaKeel Online Media Service」です。

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指差呼称にはあらゆる教育方法がありますが従来のポスターやイラスト、標語の掲載といった教育法では、実施する目的や効果までは理解できません。そうした課題を解決するのが、ラキールの労働衛生教育動画サービスです。動画で動作説明をすることにより、一つひとつの動作の意味が分かるので、労働者は実践しやすくなり、記憶にも定着しやすくなります。こちらにサンプル動画がございますので、アニメーションを活用した教育動画の分かりやすさをぜひ体感してみてください。
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モバイル機器の使用もできるため、従業員はいつでもどこでも学びやすいのも特長であり、多言語対応も可能であるため、外国人従業員への教育にも利用できます。

また教育担当者向けの受講者管理ツールも備わっており、教育スケジュール、閲覧動画の選択、視聴履歴管理、テストの自動採点や結果の把握などの機能で管理を適切に実施することもできます。

LaKeel Online Media Serviceは、転倒災害防止の内容も含んでおり、転倒災害防止のための従業員教育に最適なツールです。


まとめ

転倒災害は、労働災害の中でも特に件数の多い深刻な災害の一つです。今後、ますます労働者の高齢化が進んでいく中で、より一層、防止策を強化していく必要があります。環境面の改善と共に、安全衛生教育を徹底していくことが重要です。
LaKeel Online Media Serviceは、どのような労働者にとっても学びやすいツールです。効果の出る安全衛生教育手法をお探しの場合には、ぜひお気軽にご相談ください。

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