トラックの荷台後部に装着された荷物積み降ろし用の昇降装置で、重い荷物の積み降ろしには欠かすことができないテールゲートリフターですが、労働安全衛生規則等の一部改正により、2024年(令和6年)2月1日からテールゲートリフターによる荷役作業についての特別教育が義務化されました。

今回は、テールゲートリフターについての基本的な知識からテールゲートリフターを利用する時の注意点、また特別教育の義務化に関わる講習や労働安全衛生規則の改正のポイントについてご紹介します。

テールゲートリフターとは?パワーゲートとの違い

テールゲートリフターとは、トラックの荷台後部に装着された荷物積み降ろし用の昇降装置で、重い荷物の積み降ろしに大変重宝する機械です。パワーゲートとも呼ばれることがありますが、こちらの呼び方は極東開発工業株式会社が商標登録している商標名になります。
テールゲートリフターを利用するとフォークリフトなどの荷役運搬機械が使えない場所でも荷物の積み降ろしが可能になるため、荷役時間の短縮につながり、作業者の負担を軽減できることから業務の効率化に大きく貢献する装置といえるでしょう。近年はトラックドライバーの高齢化や国土交通省が中小企業向けに補助事業(2023年9月時点)を行っていることから、普及が進みつつあります。

テールゲートリフターを利用するメリット

テールゲートリフターを利用するメリットとしては、主に4つが挙げられます。

・荷役作業時間の削減
テールゲートリフターは、使用方法をしっかりと守れば、人間の力では難しいほどの重い荷物を荷台に貨物を簡単かつ確実に昇降させることができます。そのため、荷物の積み卸し作業が迅速かつスムーズにでき、業務の効率化が進むことで生産性が向上します。

・荷役作業における身体への負担の軽減
テールゲートリフターを利用することで、荷物を取り扱う際の人力作業が大幅に削減されます。そのため、従来の手動の荷物積み卸し作業に比べ、身体への負担が大きく軽減されます。近年多くの労働者が悩まされている腰痛の防止対策にもなり、荷役に伴う作業員の安全を確保することにつながります。重い荷物を人力で運ぶことは、けがのリスクを高めます。テールゲートリフターを使用することで、作業者は負担の大きな作業から解放され、より安全な作業環境が提供されるでしょう。

・作業品質の維持と荷物の保護
荷物を適切に固定し、テールゲートリフターによって荷役作業を行うことで、荷物の落下などによる損傷を防ぐことが可能です。その結果、荷役作業の品質が維持されます。

・生産性の向上
初期投資こそ必要ですが、テールゲートリフターの導入は中長期的にはコスト削減につながります。作業の効率化と労働者の身体的負担の軽減により、荷役作業に関わる全体のコストが削減され生産性の向上が見込めます。

テールゲートリフターの操作に係る特別教育の義務化について(労働安全衛生規則の一部改正)

貨物自動車での荷役作業における墜落、転落などの労働災害を防止するための安全対策の強化を目的として、労働安全衛生規則が改正され特別教育については2024年(令和6年)2月1日から、それ以外の規定は2023年(令和5年)10月から施行されます。改正のポイントは主に3つです。

改正のポイント

1、昇降設備の設置及び保護帽の着用が必要な貨物自動車の範囲を拡大 ※2023年10月施行

これまで最大積載量5トン以上の貨物自動車が対象でしたが、最大積載量2トン以上の貨物自動車に範囲が拡大します。
なお、保護帽(ヘルメット)の着用については、最大積載量5トン以上の貨物自動車に加え、最大積載量が2トン以上5トン未満の貨物自動車であって荷台の側面が構造上開閉できるもの(平ボディ車、ウイング車)と、最大積載量が2トン以上5トン未満の貨物自動車であって、テールゲートリフターが設置されているもの(テールゲートリフターを使用せずに荷を積み卸す作業を行う等の場合は適用されません)が追加されます。

2、テールゲートリフターによる荷役作業についての特別教育を義務化 ※2024年2月施行

貨物自動車に設置されているテールゲートリフターを使用して荷を積み卸す作業において、テールゲートリフターの機能や特徴、その危険性を十分に理解しておらず、不適切な取扱いによる墜落、転落、転倒などの労働災害が発生していることから、特別教育が必要な業務に加えられました。

3、運転者が運転位置から離れるときの措置の適用除外 ※2023年10月施行

運転席とテールゲートリフターの操作位置が異なる貨物自動車で、原動機(エンジン)を停止するとテールゲートリフターが動かせなくなるものは、荷役装置(テールゲートリフター)を最低降下位置に置く義務と原動機(エンジン)の停止が適用されなくなりました。ただし、ブレーキをかけるなどの逸走防止措置を講じることは必要です。

テールゲートリフターの特別教育について

テールゲートリフターの特別教育については以下の通りです。

特別教育の対象者

荷を積み卸す作業におけるテールゲートリフターの操作の業務を行う労働者

※「テールゲートリフターの操作」には、稼働スイッチの操作のほか、キャスターストッパー等の操作、昇降板の展開や格納の操作等が含まれます。
※荷を積み卸す作業を伴わない定期点検等の業務は対象外です。
※介護用車両に設置された車いす用の昇降装置等は対象外です。

特別教育の内容

【学科教育】

1、テールゲートリフターに関する知識(1.5時間)
・テールゲートリフターの種類、構造及び取扱い方法
・テールゲートリフターの点検及び整備の方法

2、テールゲートリフターによる作業に関する知識(2時間)
・荷の種類及び取扱い方法
・台車の種類、構造及び取扱い方法
・保護具の着用
・災害防止

3、関係法令の科目に係る学科教育(0.5時間)
・労働安全衛生法令中の関係条項

【実技教育】

1、テールゲートリフターの操作の科目に係る実技教育(2時間)

※一定条件を満たすと、テールゲートリフターの操作の業務に関わる特別教育の科目の省略ができる場合があります。

なお、特別教育を実施せず、労働者に作業を行わせた事業主は、労働安全衛生法第59条第3項に違反することとなり、「6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金」、また、特別教育の記録を保存しなかった場合は、労働安全衛生法第103条第1項に違反し、「50万円以下の罰金」となります。

特別教育はどこで受けられるか

特別教育は、自社もしくは外部機関にて受講する必要があります。
特別教育とは、労働安全衛生法第59条第3項に基づき、「厚生労働省令で定める危険又は有害な業務」に労働者をつかせるときに行わなければならない教育のことを指します。
特別教育は、厚生労働省の告示で定められるカリキュラム(科目及び時間数)の内容にて、社内で行うことが原則とされています。ただし、社内に教育を行える人材がいない場合には外部機関が実施する特別教育を受講することも可能です。

テールゲートリフターの特別教育を実施する講師は、学科及び実技の科目について十分な知識と経験を有する者でなければなりません。

労働安全衛生規則等の一部改正の背景

日頃トラックに荷物を積んだり降ろしたりするに荷役作業では、作業員が地上と荷台の上を上下するので、その度に位置エネルギーが発生します。この位置エネルギーは、誤って墜落、転落した時にはとても大きな危険エネルギーに変換され、大怪我か死亡する可能性があります。陸上貨物運送事業における労働災害は増加傾向にあり、最も多いのが荷役作業時の墜落、転落事故です。大怪我をした人、亡くなられた方の半分以上がヘルメット未着用でした。死亡災害は、最大積載量5トン以上のトラックで約5割、最大積載量2トン以上5トン未満のトラックで約4割発生しており、ヘルメットを適切に着用していれば死亡に至らなかったケースもあります。墜落、転落事故が多いのは、平ボディやウイング車など側面が開放できる構造のものや、荷役作業時に使用するテールゲートリフターです。テールゲートリフターに関連する労働災害の半分以上は、不適切な取り扱いによるもので、テールゲートリフターに荷物と作業員が一緒に乗って走行していて、荷物が移動した時や転倒した時に発生しています。
これらの荷役作業時の労働災害を防止するため、労働安全衛生規則が改正されました。

まとめ

テールゲートリフターは、適切に使用することで荷役時間の短縮につながり、作業者の負担を軽減できることから業務の効率化に大きく貢献することができる装置です。ただし、正しい知識を身につけ、適切に使用しないと重大な事故に繋がる危険性があります。特別教育を実施することも重要ですが、日々の業務の中で、従業員自ら事故の防止のために意識的に行動するようにならなければ、労働災害の減少にはつながりません。そのためには、安全教育の徹底は特に重要です。

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