現代の物流業や製造業において、フォークリフトは欠かせない存在となっています。その普及率は非常に高く、効率的な物流管理が求められる時代背景の中で、その役割はますます重要性を増しています。しかし、利用が増える一方で、フォークリフトによる事故も一定数発生しており、操作ミスや視界不良、整備不良が主な原因とされています。本コラムでは、フォークリフトの利用における安全教育の必要性や事故の原因分析、さらに安全教育の効果測定や改善方法を詳しく解説していきます。

フォークリフトの利用状況

フォークリフトは、物流業や製造業において欠かせない存在です。倉庫内での荷物の移動や製品の積み込み・積み下ろしなど、多岐にわたる作業に利用されます。特に、効率的な物流管理が求められる現代において、フォークリフトの役割はますます重要となっています。

日本国内におけるフォークリフトの利用状況を見てみると、その普及率は非常に高いです。物流センターや工場、さらには小売業のバックヤードなど、多くの現場でフォークリフトが活躍しています。これにより、作業効率が向上し、労働力の削減にも寄与しています。

フォークリフトの利用が増える一方で、事故のリスクも高まります。実際に、フォークリフトによる事故は毎年一定数発生しており、その影響は深刻です。

厚生労働省の労働災害統計(2022年)のデータによると、フォークリフトに起因する労働災害発生件数は過去3年間で増加傾向にあります。2020年には1,989件、2021年には2,038件、そして2022年には2,092件に達しました。さらに、2022年のフォークリフトに起因する死亡事故は34件に上り、前年から10件以上増加しており、これはフォークリフトに起因する死亡事故において、2012年以来の高い数値となっております。

※出展:フォークリフトに起因する労働災害の発生状況

フォークリフトに起因する労働災害の増加は、現在の企業にとって大きな課題となっています。この課題を解決するためには、従業員の安全を守る取り組みが必要不可欠です。

フォークリフトの利用においての安全教育の必要性

フォークリフトは物流や製造業において非常に重要な役割を果たしていますが、その利用には常にリスクが伴います。フォークリフト事故の原因を分析し、安全教育の必要性を理解することは、労働者の安全を確保するために欠かせません。

フォークリフト事故の原因と分析(Safety-IIの視点からのアプローチ)

企業は事故防止対策を講じる際、結果には必ず原因があるといった「因果律信条」(causality credo)に基づき、事故は特定の失敗や機能不全が原因であると考え、根本的な原因を見つけようとします。それ自体は間違ってはいませんが、事故の原因を操作ミスやマニュアル手順の徹底不足、そして労働者への安全教育不足といった特定の失敗や異常のような単一要因に求める傾向が強くなり、その失敗の背後にある多くの要因を見逃す確率が高くなります。それだけでは真の事故防止には繋がりません。

Safety-IIでは、物事がうまくいくプロセスと失敗するプロセスは本質的に同じであると考えます。失敗の直接的な原因を調査のスタート地点と捉え、失敗へと突き進んだプロセスを理解しつつ、同時に日頃はどのようなプロセスで成功しているのかを調査します。日常業務の中で発生する変動、可変性に対しどのように調整をし、対処しているのか?そのプロセスをどのように支援・強化することが重要なのかを分析します。

以下にて、フォークリフト事故の原因とそれらを引き起こす背景要因を掘り下げ、どうすればベクトルをうまくいく方向に向けられるのか、企業が根本的な対策を講じるための視点を紹介します。

・操作ミス

フォークリフトはその操作性の良さから狭い場所での作業が多く、そのため歩行者や作業者の近くで操作する場合が多々あります。そのような環境の中、限られた時間内で多くの荷物の荷降しや荷揚げ作業を終わらせないといけないので、わずかなミスでも重大な事故につながることがあります。操作ミスの背景には、オペレーターが時間のプレシャーを受け安全マニュアルを守らないか、これらは教育や訓練でカバーすべき重要な点です。

・作業マニュアルの不遵守もしくは効率と安全のトレードオフ問題

フォークリフトの操作には、厳格に守らなければならないマニュアル手順があります。しかし、忙しさや慣れにより、これらの手順が守られないケースがあり、事故の直接的な原因となる可能性が高いため、改める必要があります。オペレーターや周辺で働く作業員には、再度安全講習を行う必要がありますが、それだけでは不十分です。同時に作業マニュアルの見直しも必ず実施するべきです。

作業員にとって、安全を100%確保しつつ効率も100%達成することはほとんど不可能です。そのため、安全を確保しながら、決められた時間内に作業を終えるためにはどうすれば良いか、「効率と安全」を天秤にかけ、どちらをどれくらい優先するかのトレードオフを行う必要があります。この調整がうまくいかない場合、ヒヤリハットや事故が発生しやすくなる傾向があります。

作業環境は一見変わらないように見えても、実際には変化していることが多く、非定常作業も頻繁に発生します。そうした中、過去の事故に基づいて追加された厳しいルールや、現場をよく知らない国からの規制が加わることもあり、現場と乖離したものになることも少なくありません。これでは、いくら作業員を教育しても、結果的にマニュアルの不遵守が再発してしまいます。

効率と安全をバランスよく達成するためには、うまく調整できている作業員に意見を聞くなどして、作業マニュアルを見直すことが有効な手段となるでしょう。

・安全教育の実施不足

新入社員や操作経験の少ないオペレーター、周辺で作業する作業員への安全教育が不十分であると、事故のリスクが高まります。教育が徹底されていない背景には、教育の内容が現実の業務に即していないことや、教育の機会が十分に提供されていないことが挙げられます。このような背景により、基本的な安全知識や操作技術が不足した状態で作業が行われることが問題となります。

・背景要因としてのシステム的問題(Safety-IIの視点からのアプローチ)

前述の通り、フォークリフト事故の発生には、単なる不注意や操作ミスといった直接的な原因だけでなく、その背後に潜むシステム的な問題が深く関わっています。例えば、作業者が過密スケジュールにより十分な時間が取れず、不注意や判断ミスが生じやすくなります。このような状況では、作業中のエラーが避けられない結果として発生し、組織全体の安全性を脅かす可能性が高まります。

また、フォークリフトの適切な利用や操作がされていない場合、その背景には、作業効率を優先する企業文化や適切な作業手順の準備とそれに対する教育・訓練の不足があるかもしれません。これらのシステム的背景要因は、「なぜ失敗をしたのか」といった視点だけでは見つけることが困難ですこのような擾乱の中でも“うまくいくように”調整して作業を遂行している作業者が必ずいます。そのような作業者が日頃どのように工夫して“うまくいくように”調整しているのかを分析することで、うまくいく時の基準が見えてきます。この基準が明確になれば、逸脱していることも容易に識別できるようになることでしょう。

事故を防ぐためには、組織全体の相互作用や人間の行動の可変性を理解し、プロアクティブな対策(先取りした対策)を講じる必要があります。うまくいった事例を分析し、その成功を支える要因を強化することで、システムの柔軟性と回復力を高めるための設計が可能になります。操作ミスや手順の不徹底、教育不足といった問題を表面的に取り除くだけでなく、それらの背後にあるプロセスや組織全体の可変性と柔軟性を分析し、改善していくことが根本的な対策となり、同様の事故の再発リスクを低減し、企業全体の安全性を向上させることができます。
ですので、これらの視点をもとに、フォークリフト事故の原因を単なる個人のミスに留めず、組織全体の安全性を高めるための取り組みとしていくことが必要です。

フォークリフトの安全教育を社内で実施する際のポイント

続いて、フォークリフトの安全教育を社内で実施する際のポイントについて解説します。

めったに起きない事故事例を安全教育に変換するには

フォークリフトの事故を理解し、それに基づいた安全教育を行うことは非常に重要です。例えば、フォークリフトを規則に反する操作や死角に作業員がしゃがんでいた、荷物の不安定な積載などが直接的な原因で発生した事故であれば、その行為がなぜ怖いのか、それに対する具体的な対策を教育の中で取り上げることで効果が期待できます。しかし、本当に事故から学習するためには、事象が発生した背景やプロセスをシステム的に再評価する必要があります。事故調査の際には、失敗の原因だけでなく、成功要因を評価する「ダブルループ学習」や、組織間の相互学習が有効であり、これにより組織は単なる反応ではなく、根本的な改善が可能になります。また、学習は継続的に行われるべきであり、組織全体で日常的なパフォーマンスをレビューすることが、長期的な改善に繋がります。

定期的な再教育を実施する

フォークリフトの安全教育は一度きりではなく、定期的な再教育が必要です。継続的な教育を行うことで、従業員の安全意識を維持し、最新の安全対策を共有することができます。特に、新しい技術や規制が導入された場合には、それに対応した教育を行うことが重要です。
また、成功例と失敗例の両方から学び、継続的なフィードバックと相互学習の仕組みを取り入れることも重要です。これにより、単に過去の過ちを繰り返さないだけでなく、組織全体が柔軟に対応し、変化に強い体制を築くことができます。

教育動画・オンライン教材を利用する

フォークリフト安全教育を実施したくても、社内に教育資料の用意がないことや、業務の兼ね合いでそもそも教育する時間を講師、従業員ともに設けられないことが多くございます。

また、安全教育を実施できたとしても、従業員に学ぶ意識がないことや、再教育の頻度が少ないことから知識が身につかないことも安全教育の課題です。

教育動画及びオンライン教材を活用すれば、これらの課題を解決し、効率的に学ぶことができます。
教育資料の準備や特別に実施する時間はもちろん不要となり、また、動画教材は情報がわかりやすく記憶に残りやすいこと、個人ペースで実施、再教育ができることも利点です。

例えば、ある企業ではオンライン教材を導入した結果、講師の招集コストを削減し、従業員の学習時間を柔軟に調整できるようになりました。その結果、従業員が自分の業務へ集中することができ、生産性が向上したという報告があります。

詳細はこちら>>

成功事例を活用して安全教育を強化する

フォークリフトの安全教育において、成功事例を取り入れることは非常に効果的です。従来の安全教育では、事故や失敗の事例に焦点を当てることが多いですが、実は成功事例からも多くの学びを得ることができます。
例えば、ある企業では、フォークリフトの操作において特に優れた判断をした作業員の成功事例やミスを防ぐために工夫していることを共有することで、他の従業員にもその成功要因を学ばせる取り組みを行っています。これにより、作業員は「何がうまくいったのか」を理解し、自分の作業に取り入れることができます。これが成功要因の分析と共有であり、安全意識の向上に貢献します。

成功事例を活用することで、従業員はポジティブなモチベーションを持って学び、実践するようになります。さらに、成功事例は他の従業員にも成功のイメージを提供し、全体の安全意識を向上させる効果があります。これにより、単にミスを避けるだけでなく、積極的に正しい行動を取る文化が醸成されるでしょう。

安全教育の効果測定と改善方法

効果的な安全教育を実現するためには、その効果を測定し、必要に応じて改善していくことが不可欠です。以下では、事故発生率のモニタリング、安全教育後のフォローアップアンケートの実施について解説します。

事故発生率のモニタリング

事故発生率のモニタリングは、安全教育の効果を評価するための重要な手法です。例えば、特定の期間における事故発生率の変動を追跡することで、安全教育の有効性を測定できます。事故発生率のデータは、安全対策の改善点を特定する上で非常に有用です。これにより、どの部分に追加の教育や対策が必要かを明確にすることができます。継続的なデータ収集と分析により、安全性を向上させるための的確な判断が可能となります。

安全教育後のフォローアップアンケート実施

安全教育の理解度や実際の業務への適用を評価するために、フォローアップアンケートを実施することも重要です。アンケートは従業員のフィードバックを直接反映できるため、安全教育の質を向上させる有効な手段です。具体的には、「教育内容のどの部分が最も役立ったか」や「さらに詳しい説明が必要な部分はどこか」といった質問を含めることで、従業員が教育内容をどれだけ実践できているかを把握できます。このアプローチにより、教育の継続的な改善が可能となり、組織全体の安全意識を向上させることができます。

まとめ

フォークリフトの安全教育は、労働者の命と健康を守るために極めて重要です。本コラムでは、フォークリフトの安全教育の必要性や事故原因の分析、そして社内での実施ポイントについて詳しく解説しました。

複数の要因が絡み合って発生する不安全行動に対しては従来の安全教育だけでは防げません。教育効果を高めたいとお考えの方は、「LaKeel Online Media Service」がおすすめです。

労働安全衛生などに関するアニメーションによる教育動画を500本以上提供しており、学ぶ意欲のない従業員でも興味が沸くよう工夫されているため、学びやすく理解しやすい内容となっています。継続的で効果的な安全教育を通じて、事故の発生を未然に防ぎ、労働環境の安全性を向上させましょう。安全教育がしっかりと浸透すれば、組織全体の安全文化の醸成にもつながり、労働者一人ひとりが安心して働ける環境が実現されます。


サンプルムービー

指差呼称の
メカニズムを
再生する
他の動画も見てみる
(無料視聴申し込み) ナリアちゃん

サンプル動画がございますので、アニメーションの教育動画による学びやすさ・理解しやすさを、ぜひ一度体感してみてください。