作業現場における安全の確保は非常に重要です。特に、機械設備のメンテナンス作業を行う際は、不意の機械作動を防ぎ、作業者の安全を確保するための対策が必須になります。このような状況において、ロックアウト・タグアウト(LOTO)は、作業者を機械による危険から守るために重要な役割を果たす災害防止策です。
そこで今回は、ロックアウト・タグアウト(LOTO)の意味や関連法令、その種類や手順、定着するための教育方法のポイントをご紹介します。

ロックアウトとは?

ロックアウトとは、機械や設備に供給されるブレーカー・スイッチ・バルブ等のエネルギー源(電力、ガス、油圧など)を物理的に遮断し、その状態を施錠することにより、誰もが装置を勝手に再稼働させることができないようにする安全対策のことを指します。
この措置により、メンテナンスや修理、清掃作業を行う作業員が、予期せぬ機械の動作によって怪我をすることを防ぎます。製造業の現場においては、生産機械や設備のメンテナンス作業中に生じる労働災害は大きな事故に発展することも少なくありません。挟まれ・巻き込まれ事故や感電事故により、大怪我や最悪の場合、死亡事故につながることもあります。
そのため、生産設備や機械のメンテナンス時における安全管理は極めて重要とされており、確実な労働災害防止策の実施が求められています。

また、ロックアウトを実施する際に、安全な箇所に警告タグを取り付け、機械や装置の停止・点検中であること等を周囲に知らせるために明示する安全対策のことをタグアウトと呼びます。

タグアウトとは?

タグアウトとは、機械や装置に供給されるエネルギー源を遮断した際に、その遮断装置に「操作禁止」や「始動禁止」などと記載された警告札(タグ)を安全な箇所に取り付け、機械や装置の停止・点検中であること等を周囲に知らせるために明示する安全対策のことを指します。この警告札によって、他の作業者に対して、該当の機械や装置が作業中であること、そして無断で操作してはならないことを明確に知らせることができます。

ロックアウト・タグアウトとは

ロックアウト・タグアウト (Lockout・Tagout, LOTO) とは機械や設備の点検、メンテナンス時の際、不意の機械作動を防ぎ作業者の安全を確保するために行われる安全対策のことを指します。
通常、タグアウトはロックアウトと合わせて行われます。ロックアウトは、エネルギー源の遮断装置に物理的な施錠をすることで、誤ってエネルギーが供給されるのを防ぎます。そして、タグアウトによって、その遮断状態が作業中であることが明確に示されます。この二重の安全対策によって、作業者の安全が確保されるのです。これらの安全対策のことは、一般的にロックアウト・タグアウトと呼ばれ、英語表記ではLockOut・TagOutと記載されることから、LOTOとも呼ばれます。

ロックアウト・タグアウトが必要な2つの理由

ロックアウト・タグアウトが必要な理由は、主に以下の2つが考えられます。

・労働災害の予防ならびに従業員の安全確保

厚生労働省が発表した令和4年の労働災害発生状況によれば、機械設備等による「はさまれ・巻き込まれ」事故は、死傷災害全体の11%を占め、製造業ではその比率が24%、6416件に上昇しています。この機械によって起こる機械災害は、非常に危険で、「はさまれ・巻き込まれ」事故に遭うと、身体部位の切断・挫滅等の重大な災害や最悪の場合死亡に至ることが多いのが特徴です。
このような深刻な事故を防ぐために、ロックアウト・タグアウトの実施は極めて重要とされています。

・法令の遵守(労働安全衛生規則107条)

日本では、第107条 (掃除等の場合の運転停止等)において、機械の掃除、給油、検査、修理および調整の作業を行う場合は、機械の運転を停止し、起動装置に錠を掛け、表示札をかけ労働者以外の者が機械を運転することを防止する措置を講じることが義務付けられています。

安衛則第107条(掃除等の場合の運転停止等)
1 事業者は、機械(刃部を除く。)の掃除、給油、検査、修理又は調整の作業を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止しなければならない。ただし、機械の運転中に作業を行わなければならない場合において、危険な箇所に覆いを設ける等の措置を講じたときは、この限りでない。

2 事業者は、前項の規定により機械の運転を停止したときは、当該機械の起動装置に錠を掛け、当該機械の起動装置に表示板を取り付ける等同項の作業に従事する労働者以外の者が当該機械を運転することを防止するための措置を講じなければならない。

ロックアウト・タグアウト(LOTO)の種類と手順

●個人ロックアウト・タグアウト(個人LOTO)

個人LOTOは電源の遮断と、個人またはグループLOTOの一部として実施されます。

①通知

周囲にいる作業者などにLOTOをすることを知らせてください

②機械の停止

設備、機械、システムを通常の停止手順に従って停止してください

③エネルギーの遮断とタグの設置

遮断装置を操作して、設備から危険なエネルギーや危険な物質を遮断し、LOTO器具と錠前、タグを遮断装置に取り付けてください。

④残留エネルギーの抑制と放出

設備に蓄積された危険なエネルギーや危険な物質を無くすか、抑制してください。

⑤安全の確認

周囲にいる作業者など、全員が安全な場所にいることを確認し、設備、機械、システムを始動させ、危険なエネルギーや危険な物質が、制御されていることを確認してください。

⑥作業開始

確認ができたら、保全、修理、セットアップなどの作業を行ってください。

●グループロックアウト・タグアウト(グループLOTO)

グループLOTOは、複数の人が作業を行う場合に使用される手法で、一人一人が個別のロックやタグを管理するのではなく、集団で管理します。この方法では、作業を行う全ての人が安全であることを確認し、全員が作業完了するまでエネルギー源が再び接続されることがないようにします。グループLOTOではロックボックスを使用する場合と、使用しない場合があります。

ロックボックスの使用は、複数のエネルギー源を持つ作業場所で特に有効な手段です。全ての関係者が自分の個人用の鍵をロックボックスに入れ、そのボックスをロックすることにより、最後の作業が完了し、全員がその場を離れるまで、どのエネルギー源も再び有効にすることはできません。LOTO手順を実行する際には、必ず指定認定社員が行う必要があり、ロックやタグを用途に応じて色分けしておくことで、それぞれの目的を一目で識別できるようにすると良いでしょう。

例えば、LOTOをしてはいけない場所には南京錠と、黄色のタグを使用し、操作禁止場所には南京錠と青色のタグをつけるようにします。そうすることで、誤ったLOTOの運用を回避できます。安全対策として、これらの鍵は常に携帯し、危険エネルギーを確実に遮断することが非常に有効です。LOTOの鍵は、命を守る大切なものですので、肌身離さず持ちましょう。

ロックアウト・タグアウトを定着させるためには

ロックアウト・タグアウトを定着させるためには、労働安全衛生教育の実施が必要不可欠です。
製造業の労働災害の原因を踏まえ、必要な労働安全衛生教育(以下、安全教育)の主なポイントをご紹介します。

●事故が起きる原因に基づき安全教育を行う

ロックアウト・タグアウトがなぜ機能しなかったのか、その原因に基づき防止するための安全教育を徹底することが重要です。

●労働災害事例を示して注意喚起する

従業員に対して、職場にはさまざまな危険があることを労働災害の事例を通じて注意喚起することが大切です。現場で実際に生じ得る労働災害の事例を探して、安全教育に使用すると良いでしょう。

●「かもしれない」意識で危険を回避

労働災害が発生する恐れがある道具使用や環境下で作業する場合には、常に「かもしれない」意識を持つことが重要です。これにより、不安全状態と不安全行動を回避し、災害防止につながります。

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●決められた作業手順

通常とは異なる手順で作業したり、工程を飛ばしたりすることで、不安全状態に陥ることもあります。常に決められた作業手順を徹底することが重要です。

●5Sの徹底

作業現場においては、整理、整頓、清掃、清潔、躾の5つのSを徹底することが、安全のためにも欠かせません。

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●異常状態が発生したときの対応

異常状態とは、職場における作業環境、作業設備、作業方法及び作業者の行動が「一定の基準からはずれた状態」を指します。
職長を中心に、異常の早期発見のための日常点検や、機械の故障時などの応急措置、上司・部下との「報・連・相」と教育訓練、再発防止・予防措置などを徹底することが重要です。

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安全衛生教育の方法

安全衛生教育を行っていても、従業員の学習意欲が低い、教育しても理解度が低い・実務で活かされないといったことが原因で期待した効果を得られない企業も多いです。
そのような企業におすすめの方法として、労働安全の考え方として注目されている「Safety-II」に基づいた成功事例から学ぶ安全衛生教育の方法があります。
安全衛生教育の方法として、従来はSafety-Iという考え方が中心になっていました。このSafety-Iは、事故やインシデントの未然防止に注力する考え方で、「うまくいかないこと」に着目し、その原因を排除することで安全を探求する方法です。一方でSafety-IIは、トラブルへの対処と破局的状況の回避を重視するもので「うまくいっていること」にも着目して安全を探求します。様々なトラブルや制約の中で、物事がうまく行われ、意図する結果が得られるように、絶えず変化する日常業務が現場でどのように行われているのかを注視し、理解することを重視した先取型安全管理となっており、今までよりさらに効果的な安全衛生教育を実践することができるようになるのです。

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●まとめ

ロックアウト・タグアウト(LOTO)の適切な実施は、作業現場における安全の確保と労働災害の予防に不可欠です。不意の機械動作を防ぎ、作業者を守るこの安全防止策は、非常に重要な手段であり、従業員の理解と実施の徹底は欠かせません。そのため事業者は、労働者がロックアウト・タグアウトの重要性を理解し、正しく実行できるように、定期的な安全教育を行う必要があります。

そこで、労働安全衛生教育の拡充を目指す企業におすすめなのが、企業向けe-ラーニング・教育動画サービス「LaKeel Online Media Service」です。本サービスは、ロックアウト・タグアウトを含む、労働安全衛生に関するアニメーション教育動画を500本以上提供しており、学ぶ意欲のない従業員でも興味を持てるよう工夫されており、学びやすく理解しやすい内容となっている従業員向け教育サービスです。

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