全国安全週間は、毎年7月1日から7日までに実施されている労働災害防止を広く行う取り組みです。期間中は、活動をより広く進めるために、スローガンが掲げられます。スローガンは、毎年異なるものが掲げられてきました。

今回は、全国安全週間の最新スローガンをはじめ、歴代スローガンをご紹介します。また今年2024年の全国安全週間のスローガンを押さえて、実施に活かしてください。

全国安全週間とは?

まず、全国安全週間の概要とスローガンの役割をご紹介します。

全国安全週間とは

全国安全週間とは、毎年7月1日から7月7日に厚生労働省と中央労働災害防止協会が主唱者として実施される労働災害防止活動の推進を図るためのキャンペーンで、労働安全衛生に関する意識を高め、労働災害を防止することを目的として実施される1週間のことを指します。
全国安全週間の効果を高めるため、毎年、6月1日から6月30日がその準備期間として設定されています。

全国安全週間の歴史は長く、昭和3年(1928年)に第1回が実施されて以来、一度も中断することなく続けられ、令和6年(2024年)で第97回を迎えます。

全国安全週間のスローガンとは?

全国安全週間は一部の期間を除き、毎年、スローガンが定められています。そのときの課題と施策などを踏まえたスローガンが公表され、週間中は職場などの看板やポスターに掲げられます。スローガンは毎年一般公募が行われ、応募されたものの中から厚生労働省が選定して決定します。2024年は、下記のテーマで募集され、「危険に気付くあなたの目 そして摘み取る危険の芽 みんなで築く職場の安全」に決まりました。

  • 高年齢労働者の増加など就業構造の変化及び働き方の多様性を踏まえた安全対策の必要性も喚起できるもの
  • 転倒災害や腰痛といった、労働者の行動に起因する労働災害の予防に必要な、安全意識の啓発や体づくりの必要性を喚起できるもの
  • 企業の安全管理体制の強化を奮起させるもの
  • 経験の少ない未熟練の労働者への安全対策の必要性を喚起できるもの

全国安全週間の歴代スローガン一覧

全国安全週間の歴代スローガンを新しい順に見ていきましょう。

第97回 令和6年度 危険に気付くあなたの目 そして摘み取る危険の芽 みんなで築く職場の安全
第96回 令和5年度 高める意識と安全行動 築こうみんなのゼロ災職場
第95回 令和4年度 安全は 急がず焦らず怠らず
第94回 令和3年度 持続可能な安全管理 未来へつなぐ安全職場
第93回 令和2年度 エイジフレンドリー職場へ! みんなで改善 リスクの低減
第92回 令和元年度 新たな時代に PDCA みんなで築こう ゼロ災職場
第91回 平成30年度 新たな視点でみつめる職場 創意と工夫で安全管理 惜しまぬ努力で築くゼロ災
第90回 平成29年度 組織で始める安全管理 みんなで取り組む安全活動 未来へつなげよう安全文化
第89回 平成28年度 見えますか? あなたのまわりの 見えない危険 みんなで見つける 安全管理
第88回 平成27年度 危険見つけてみんなで改善 意識高めて安全職場
第87回 平成26年度 みんなでつなぎ 高まる意識 達成しようゼロ災害
第86回 平成25年度 高めよう 一人ひとりの安全意識 みんなの力でゼロ災害
第85回 平成24年度 ルールを守る安全職場 みんなで目指すゼロ災害
第84回 平成23年度 安全は 家族の願い 企業の礎 創ろう元気な日本!
第83回 平成22年度 みんなで進めようリスクアセスメント めざそう職場の安全・安心
第82回 平成21年度 定着させよう「安全文化」 つみ取ろう職場の危険
第81回 平成20年度 トップが率先 みんなが実行 つみ取ろう職場の危険
第80回 平成19年度 組織で進めるリスクの低減 今一度確認しよう安全職場
第79回 平成18年度 全員参加でリスクの低減 確立しよう「安全文化」
第78回 平成17年度 トップの決意とみんなの創意 リスクを減らして進める安全
第77回 平成16年度 危険をみつけて取り組む改善 トップの決意とみんなの実行
第76回 平成15年度 危険をみつけて進める改善 高めよう職場の安全管理
第75回 平成14年度 めざすゴールは危険ゼロ 進めよう職場の安全管理
第74回 平成13年度 世紀をこえて「安全第一」 めざそう職場の危険ゼロ
第73回 平成12年度 災害ゼロから危険ゼロへ みんなで築こう新しい安全文化
第72回 平成11年度 見逃すな危険の芽 さらに高めよう職場の安全
第71回 平成10年度 今一度確認しよう「安全第一」 つみ取とろう職場にひそむ危険の芽
第70回 平成9年度 安全はトップの決意とあなたの努力 めざそう災害ゼロの明るい職場!
第69回 平成8年度 『危なかった』は赤信号 つみとろう職場に潜む危険の芽
第68回 平成7年度 つみとろう危険の芽 トップの決意 みんなの努力
第67回 平成6年度 職場の安全 家族の安心 災害ゼロはみんなの願い
第66回 平成5年度 “災害ゼロの安全職場!トップの決意・現場の実行”
第65回 平成4年度 設備と作業の安全で 実現しよう 災害ゼロの明るい職場
第64回 平成3年度 みんなで決意 みんなで努力 前進させよう職場の安全
第63回 平成2年度 災害ゼロはみんなのねがい あなたのために家族のために
第62回 平成元年度 決意新たに みんなで築こう災害ゼロの明るい職場を!
第61回 昭和63年度 決意新たに見直そう設備と作業の安全を!
第60回 昭和62年度 自主的に取り組もう職場の安全 進めよう設備と作業の改善
第59回 昭和61年度 みんなで取り組み達成しよう 災害ゼロの明るい職場
第58回 昭和60年度 みんなで考えみんなで築こう 災害ゼロの明るい職場を!
第57回 昭和59年度 努力と工夫を重ね さらに進めよう職場の安全を!
第56回 昭和58年度 決意を新たに努力と工夫を重ね 進めよう職場の安全を!
第55回 昭和57年度 災害ゼロはみんなのねがい さらに進めよう職場の安全を!
第54回 昭和56年度 災害ゼロはみんなのねがい 徹底させよう職場に安全を!
第53回 昭和55年度 設備と作業の改善を進め 定着させよう職場に安全を!
第52回 昭和54年度 設備と作業を見直し 定着させよう職場に安全を!
第51回 昭和53年度 新たな気持で取り組み さらに高めよう職場の安全を!
第50回 昭和52年度 みんなで見直し みんなで考え 先取りしよう職場の安全を!
第49回 昭和51年度 みんなで組み込もう 作業の中に安全を!
第48回 昭和50年度 みんなの工夫と努力で さらに進めよう 職場の安全を!
第47回 昭和49年度 みんなで考え みんなでつくろう安全な職場を!
第46回 昭和48年度 みんなで進めよう 設備と作業の安全を!
第45回 昭和47年度 さらに進めよう 設備と作業の安全を!
第44回 昭和46年度 みんなで見なおそう 設備と作業の安全を!
第43回 昭和45年度 設備・作業の安全化と環境の整備をすすめ
けがのない明るい職場をつくろう
第42回 昭和44年度 立場・持場で設備・環境の安全化を徹底し 無災害の職場をつくろう
第41回 昭和43年度 立場・持場で点検して 設備・環境を整備しよう
第40回 昭和42年度 安全のルールを守って 無災害の職場をつくろう
第39回 昭和41年度 設備・環境を点検整備して 災害のない職場をつくろう
第38回 昭和40年度 設備・環境を改善整備して 無災害の職場をつくろう
第37回 昭和39年度 作業の環境を点検整備して けがのない明るい職場をつくろう
第36回 昭和38年度 整理整頓を徹底し 良い作業環境をつくろう
第35回 昭和37年度 設備を点検整備して 職場の災害をなくそう
第34回 昭和36年度 作業設備をととのえて 職場の安全をはかろう
第18回~33回 スローガンなし
第17回 昭和19年度 決戦一路 安全生産
第16回 昭和18年度 必勝の生産 鉄壁の安全
第15回 昭和17年度 誓って安全 貫け聖戦
第14回 昭和16年度 總力戦だ 努めよ安全
第13回 昭和15年度 守れ安全 輝く日本
第12回 昭和14年度 興亜の偉業に 輝く安全
第11回 昭和13年度 安全報國 銃後の護り
第10回 昭和12年度 興せ産業 努めよ安全
第9回 昭和11年度 國の礎 産業安全
第8回 昭和10年度 産業安全 祖國の守護
第7回 昭和9年度 守れ安全 日本の飛躍
第6回 昭和8年度 國の護りぞ 身を守れ
第5回 昭和7年度 國の礎 我等の健康
第4回 昭和6年度 安全は協力より
第3回 昭和5年度 締めよ心 盡せよ設備
第2回 昭和4年度 健康は身の為 家の為 國の為
第1回 昭和3年度 一致協力して怪我や病気を追拂ひませう

歴代スローガンの傾向

昭和19年度から35年度まではスローガンなしで進められましたが、昭和36年からは復活しました。復活後のスローガンは、組織的な安全管理の推進を呼びかける内容となり、文字数も増えて表現がわかりやすくなりました。

平成に入ってからは、「みんなで取り組もう」という呼びかけだけでなく、組織的、トップダウンによる取り組みを啓発するものが見られるようになりました。また、災害ゼロを目指す安全意識の向上やリスクの低減に重点が置かれ、個人の安全意識と組織的な取り組みの両方が強調される傾向が見られます。

令和に入ってからは、持続可能性や高齢化など、時代を反映したキーワードを含むスローガンが登場するようになりました。こうしたスローガンは、令和という新しい時代の意識変化を象徴しています。

令和6年度 全国安全週間のスローガン

2024年度(令和6年度)の全国安全週間のスローガンとその背景、スローガンの下、特に力を入れたい取り組み内容をご紹介します。

令和6年度 全国安全週間のスローガン

「危険に気付くあなたの目 そして摘み取る危険の芽 みんなで築く職場の安全」

背景

今回のスローガンが決定された背景には、以下の理由があります。
令和5年の労働災害については、死亡災害は前年を下回る見込みであるものの、休業4日以上の死傷災害は前年を上回る見込みであり、近年増加傾向に歯止めがかからない状況があります。

特に以下の災害は、依然として後を絶たない状況です。

  • 転倒や腰痛といった労働者の作業行動に起因する死傷災害
  • 墜落・転落などの死亡災害

また令和5年3月に策定された第14次労働災害防止計画に基づく施策を着実に推進することも求められています。

こうした背景から、今回のスローガンが決定されました。

注力したい事項

スローガンを下に、令和6年度 全国安全週間や準備期間中は、転倒や腰痛などの死傷災害、墜落・転落などの死亡災害の予防に特に力を入れたいものです。

転倒対策については、労働災害の増加に伴い、近年、安全衛生教育の在り方、関係者の意識改革が求められています。例えば座学といった既存の手法にとらわれず、教育内容をモジュール化して短時間の動画にし、短時間で効率的・効果的な教育方法を行うことが一つのアイデアとして示されています。

職場でも作成したいスローガン

全国安全週間においては、全国安全週間のスローガンを掲出することはもちろん、職場ごとに安全に関するスローガンを作成して啓蒙することも重要です。

全国安全週間に向けて、事前に従業員から公募をして、独自にスローガンを作る企業もあります。

スローガンを作るポイント

職場ごとのスローガンを作るには、次のポイントを押さえることで効果的なものとなるでしょう。

・まずテーマを決める
先立って、まずテーマを決めます。例えば職場で転倒や腰痛が多発している場合などは、複数候補をテーマに据えてそれらのテーマに沿ったスローガンを作成すると良いでしょう。

・起こり得る場面が明確にイメージできるようにする
労働災害や事故が起こり得る場面が、明確にイメージできるようにすると、スローガンの効果が高まります。

・5・7・5で俳句のように作る
スローガンは、パッと見てわかりやすく、語呂やリズムが良いと親しみやすくなります。俳句のように「5・7・5」で作るのもおすすめです。

・カタカナなどを使って発音しやすく、読みやすくする
端的なカタカナ単語をうまく使うことで、発音しやすさや読みやすさが生まれやすくなります。
例えば、ヒヤリ、ハット、チームワークなどが挙げられます。

これらはあくまでポイントですので、テーマや語句に応じた工夫で良いスローガンを作成しましょう。

まとめ

全国安全週間の歴代スローガンや今年度のスローガンをご紹介しました。

全国労働衛生週間の取り組みが実を結ぶには、日頃の労働安全衛生教育も重要です。労働者が正しい意識と知識を持って取り組むことで、初めて効果が期待できるからです。

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