労働者の健康と安全、そして快適な職場環境を守るためには、化学物質の適切な管理が欠かせません。現在、国内の職場では数万種類もの化学物質が取り扱われ、その中でも危険性・有害性を持つ化学物質は約2,900程度あるとされています。このような状況を受け、厚生労働省は2024年4月より労働安全衛生法に基づく新たな化学物質規制を導入し、化学物質管理の意識向上を目的とした「化学物質管理強調月間」が毎年2月に設けられることになりました。今回は、化学物質管理強調月間の概要や実施内容などをご紹介します。
化学物質管理強調月間とは?
化学物質管理強調月間の概要をご紹介します。
化学物質管理強調月間とは?
化学物質管理強調月間とは、毎年2月(2月1日〜2月28日)に厚生労働省と中央労働災害防止協会が主唱者として実施されるキャンペーンで、職場における危険・有害な化学物質管理の重要性に関する意識の高揚を図るとともに、化学物質管理活動の定着を図ることを目的とした1か月間のキャンペーンのことを指します。2024年4月に施工された労働安全衛生法に基づく新たな化学物質規制を背景に2025年(令和7年)に創設されたため、2025年は第1回目となります。
目的とスローガン
化学物質管理強調月間は、広く一般に職場における危険・有害な化学物質管理の重要性に関する意識の高揚を図るとともに、化学物質管理活動の定着を図ることを目的としています。
また、化学物質管理強調月間ではスローガンを定め、月間中は厚生労働省をはじめ、経済産業省、環境省においても様々な取り組みが行われ、労働災害防止のための啓発活動が実施される予定です。
なお、2025年(令和7年度)のスローガンは、『正しく理解 正しく管理 化学物質と向き合おう』です。
スローガンの募集は、厚生労働省のウェブサイト上で行われ、スローガン選定委員会の厳正なる審査の上決定されました。受賞スローガンは以下の通りです。
金賞
正しく理解 正しく管理 化学物質と向き合おう
銀賞
危険知り 管理を徹底化学物質 みんなで守れ安心職場
銅賞
目に見えないからこそ実施しよう 化学物質のリスクアセスメント
化学物質に潜む危険 知って対策 慣れた作業も総点検
化学物質管理強調月間の実施内容
化学物質管理強調月間は、どのようなことを実施するのでしょうか。令和7年度化学物質管理強調月間実施要綱をもとに、期間中の実施内容について解説します。
趣旨
国内の職場では数万種類もの化学物質が取り扱われ、その中には、危険性や有害性が不明な物質が多く含まれています。特に規制外の物質による労働災害が多いため、規制対象外の化学物質への対策を強化し、ばく露防止のために講ずべき措置を適切に実施する制度を導入しました。2025年(令和8年)4月から約2,900物質が規制対象となり、対策を講ずべき事業場の範囲が、従来の製造業中心から第三次産業を含めた幅広い業種に大幅に拡大され、特に化学物質管理の知識が不足している中小企業や第三次産業への普及が重要になってきています。
また、国際的な動向では、化学物質のライフサイクル全体を通じた管理が求められており、国内でも関係省庁が連携して化学物質管理に取り組む必要があります。このような背景を踏まえ、厚生労働省は、経済産業省、環境省等の関係行政機関、災害防止団体等安全衛生関係団体、労働団体や事業者団体等と協力し、職場での化学物質管理の重要性を広め、化学物質管理活動の定着を図ります。
実施する事項
化学物質管理強調月間の2月1日から2月28日に実施する事項として、化学物質管理強調月間実施要綱には以下が記載されています。
【(1)主唱者・協力連携者・協賛者の実施事項】
(ア)化学物質管理に係る啓発
化学物質管理の知見が十分でない第三次産業や中小零細事業場を重点として、化学物質管理を広く浸透させることを目的とした周知啓発活動の実施
(イ)化学物質に関する説明会等の開催
化学物質に関する法令や対策等に係る、化学物質管理に取り組む事業者向けの説明会等の開催
(ウ)「化学物質と環境に関する政策対話」等の実施による情報共有及び意思疎通
(エ)化学物質アドバイザー等を活用した普及啓発
(オ)化学物質管理に係る広報資料等の作成、配布
(カ)雑誌等を通じた広報
(キ)事業者の実施事項についての指導援助
(ク)その他「化学物質管理強調月間」にふさわしい行事等の実施
(ケ)(ア)~(ク)の事項を実施するため、協力者に対し、支援、協力の依頼
【(2)実施者(各事業者)の実施事項】
(ア)製造し、又は取り扱っている化学物質の把握及び、化学物質の安全データシート(以下「SDS」という。)等による危険有害性等の確認
(イ)特定化学物質障害予防規則等の特別規則、石綿障害予防規則の遵守の徹底
(ウ)ラベル表示・安全データシート(SDS)交付、リスクアセスメントの実施等
a 製造者・流通業者が化学物質を含む製剤等を出荷する際のラベル表示・安全データシート(SDS)交付等の徹底及びユーザーが購入した際のラベル表示・SDS 交付等の状況の確認
b SDS 等により把握した危険有害性に基づくリスクアセスメントの実施とその結果に基づくばく露濃度の低減や適切な保護具の使用等のリスク低減対策の実施
c ラベル・SDSの内容やリスクアセスメントの結果に関する労働者に対する教育の実施
d 危険有害性等が判明していない化学物質を安易に用いないこと、また、危険有害性等が不明であることは当該化学物質が安全又は無害であることを意味するものではないことを踏まえた取扱物質の選定、ばく露低減措置及び労働者に対する教育の推進
e 皮膚接触や眼への飛散による薬傷等や皮膚からの吸収等を防ぐための適切な保護具の使用や、汚染時の洗浄を含む、化学物質の取扱上の注意事項の確認
f 特殊健康診断等による健康管理の徹底
g 塗料の剥離作業における健康障害防止対策の徹底
h 金属アーク溶接等作業における健康障害防止対策の徹底
(エ)化学物質管理者の選任状況の確認
(オ)日常の化学物質管理の総点検
(カ)事業者又は化学物質管理者による職場巡視
(キ)スローガン等の掲示
スローガンは、必要に応じて以下より選択
・正しく理解 正しく管理 化学物質と向き合おう
・危険知り 管理を徹底化学物質 みんなで守れ安心職場
・目に見えないからこそ実施しよう 化学物質のリスクアセスメント
・化学物質に潜む危険 知って対策 慣れた作業も総点検
(ク)有害物の漏えい事故、酸素欠乏症等による事故等緊急時の災害を想定した実地訓練等の実施
(ケ)化学物質管理に関する講習会・見学会等の開催、作文・写真・標語等の掲示、その他化学物質管理への意識高揚のための行事等の実施
化学物質管理強調月間における具体的な取り組み
化学物質管理強調月間において、主唱者である厚生労働や中央労働災害防止協会では以下のような具体的な取り組みが予定されています。
【厚生労働省】
・実務に役立つワークショップの開催
第三次産業(ビルメンテナンス・清掃業界・外食産業等)での洗浄作業で使用される洗浄剤を例に、SDSを用いたリスクアセスメントの実施とその結果に基づくリスク低減措置について、実践的な講習の実施
・化学物質管理に関するリスクコミュニケーションの開催
化学物質管理に関する有識者、業界関係者等を登壇者として、基調講演や意見交換、事例紹介等を実施。
下記について取り組み事例等も交えて理解の促進を図る。
(ア)化学物質の自律的管理の概要
(イ)化学物質の危険性、有害性情報を入手する仕組み
(ウ)リスクアセスメントの実施とその結果に基づくリスク低減措置の方法(保護具の着用等)
(エ)業種別マニュアルに基づくリスクアセスメントの実施とその結果に基づくリスク低減措置
・化学物質に関する説明会等の開催(都道府県労働局、労働基準監督署)
化学物質対策に関する説明会、都道府県の環境部局と連携した集団指導等を開催。
【中央労働災害防止協会】
・特設サイトの設置
中央労働災害防止協会ホームページに化学物質管理強調月間専用の特設サイトを開設。管理者や責任者向けの研修・セミナー情報をはじめ、事業場で役立つ様々な情報の提供。
・中小規模事業場への無料サポート事業を活用した化学物質管理支援の実施
中小規模事業場を対象に、専門スタッフが訪問、職場環境を確認した上で、アドバイスを提供。また、地域・業種ごとの団体や企業グループ、商工会などを対象に講演や説明会を実施。
・研修開催や専門家派遣による組織的な化学物質管理の支援
化学物質管理者や保護具着用管理責任者を対象とした研修を開催。また、化学物質管理の取り組みを支援するため、事業場への専門家派遣を行い、現場での研修やアドバイスを提供。
・職場における化学物質のばく露分析の支援
事業者が行うリスクアセスメントの一環として、個人ばく露測定や濃度基準値設定物質の測定などを支援。職場での化学物質ばく露状況の適切な把握をサポートします。
・啓発用図書、用品の制作と頒布
2025年(令和7年)1月6日から2月28日までのキャンペーン期間中、関連図書やスローガン入りポスター、化学物質関連表示ボード、のぼりなどを制作・提供し、職場での化学物質管理意識の向上を支援。
まとめ
化学物質管理強調月間は、職場における化学物質の適切な管理の重要性を再認識し、安全で快適な職場環境の実現を目指す重要な期間です。危険性や有害性を伴う化学物質のリスクを適切に評価し、管理を徹底することで、労働災害の防止や労働者の健康守ることができます。
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