クリエイト・シンプルとは、厚生労働省が開発した化学物質リスクのアセスメント支援ツールです。特徴を理解すると共に、活用することでどのようなメリットがあるのか、また実施方法についても押さえておきましょう。


クリエイト・シンプル(CREATE-SIMPLE)とは?

まずはクリエイト・シンプルの概要と特徴を知っておきましょう。

クリエイト・シンプルとは?

クリエイト・シンプル(CREATE-SIMPLE)とは、厚生労働省が、化学物質を取り扱う事業場を対象に開発した、化学物質のリスクアセスメントを簡易的に行えるツールです。クリエイト・シンプル(CREATE-SIMPLE)は、Chemical Risk Easy Assessment Tool, Edited for Service Industry and MultiPLE workplacesの略称です。

なお、リスクアセスメントとは、企業が職場において危険性や有害性を特定し、リスクの見積りを行った上で、優先度を決めて、リスク軽減措置を行う一連の取り組みを指します。

また、クリエイト・シンプルは、化学物質の吸入ばく露、経皮ばく露による健康リスクと、爆発物や引火物などの危険性リスクを対象としています。

ばく露(曝露)とは

有害物質や危険要因にさらされることを指し、例えば化学物質の場合、吸入や皮膚接触を通じて体内に取り込まれることを意味します。

化学物質を含む製品は、化学メーカー、製造業をはじめ、清掃業、卸売・小売業、飲食店、医療・福祉業など、さまざまな業種で使われていることから、これらのばく露による労働災害のリスクがあることを日頃から意識して、リスクアセスメントを行う必要があります。

クリエイト・シンプルは簡単な問いに答えていくだけでリスクを見積もることができ、リスクアセスメントの複雑さを一掃しているため、簡単に取り組むことができます。

リスクアセスメントと化学物質に関する義務

リスクアセスメントは、事業場における自主的な活動として推奨されてきましたが、2006年(平成18年)4月の労働安全衛生法の改正により、特定の業種や規模の事業場に対して努力義務となりました。

また、2016年(平成28年)6月からは、労働安全衛生法の改正により一定の危険性・有害性のある化学物質について、リスクアセスメントを行うことが法令により義務化されました。

さらには、2022年(令和4年)の法改正により、新たな化学物質管理の制度が導入され、事業者は職場における自律的な化学物質管理が求められるようになりました。なお、リスクアセスメントの対象物は、法改正前の674物質から2026年(令和8年)には、2,300種類に拡大される予定です

クリエイト・シンプルの内容

クリエイト・シンプルはエクセルシートで作られており、次のシートが用意されています。

・リスクアセスメントシート

化学物質ごとのリスク評価を行うためのシートです。対象製品の基本情報を入力し、シートの質問に回答することで、リスク判定をすることができます。

・実施レポート

リスクアセスメントを実施したレポートが表示されるシートです。このシートの内容からリスク低減措置を検討し、労働者に周知しましょう。

・結果一覧

リスクアセスメント実施の結果の一覧が表示されるシートです。過去の実施結果を呼び出すことも可能です。

・製品DB

自社や職場で取り扱っている製品を登録できるデータベースとなるシートです。リスクアセスメントシートに呼び出すことが可能です。

これらのシートを用いて化学物質のリスクアセスメントを行いましょう。

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クリエイト・シンプルのメリット

クリエイト・シンプルを利用してリスクアセスメントを行うメリットをご紹介します。

簡単にリスク評価ができる

エクセルシートを用いたツールで、選択肢から回答を選ぶだけでリスクを見積もることができ、簡便性に優れています。

測定しなくとも使用可能

化学物質のリスクアセスメントの手法として、労働者の化学物質へのばく露濃度等を測定する実測法がありますが、クリエイト・シンプルは測定しなくても使用できます。

幅広い化学物質取扱量に対応

化学物質取扱量は、数kL、数トンといった大量から、数mL、数gといった極少量まで幅広く対応しています。

リスクを低減するポイントもわかる

ただリスクを見積もることができるだけでなく、リスク低減措置を検討する際の支援もしてくれます。どこを改善すればリスクを低減できるかのポイントを押さえることができます。

厚生労働省版コントロール・バンディングに対する優位性

クリエイト・シンプルは、ILO(国際労働機関)が開発した簡易的な化学物質リスクアセスメント手法である「コントロール・バンディング」について、日本国内での利用を前提として開発された「厚生労働省版コントロール・バンディング」と比較して、より詳細なリスク評価が可能です。

クリエイト・シンプルは、厚生労働省版コントロール・バンディングよりも、換気や作業時間、作業頻度などの作業条件をより詳細に考慮しています。

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クリエイト・シンプルの実施方法

クリエイト・シンプルを実施するには、次の手順で行います。

クリエイト・シンプルをダウンロードする

厚生労働省の職場のあんぜんサイトの「化学物質のリスクアセスメント実施支援」のページから、クリエイト・シンプルをダウンロードします。

【参考】
厚生労働省の職場のあんぜんサイト「化学物質のリスクアセスメント実施支援」

製品DBの登録

クリエイト・シンプルのエクセルシートを開き、自社の製品を「製品DB」シートに登録します。

リスクアセスメント評価

「リスクアセスメントシート」のシートを選択し、対象となる製品の基本情報を登録します。製品DBに登録した情報を呼び出すことができます。
次に取り扱い物質に関する情報を入力したら、作業内容に関する質問へ答えていきます。すべての質問に回答し終えたら「リスクを判定」ボタンをクリックすると、リスクアセスメント評価が表示されます。

リスク低減対策の登録

「実施レポート」シートを選択し、「リスク低減対策の検討」欄で、リスク低減対策を検討していきます。さまざまな選択肢があるため、最適なものを選択していきます。
選択し終えたら「リスクの再判定」をクリックすると、再判定結果を見ることができます。

リスク低減が許容可能な水準まで達するまで、リスク低減対策の検討を続けます。

評価結果の活用

評価結果をもとに、現場での対策を行っていきます。
ただし、算出されたばく露量は推定値であるため、実際とは異なることがあることを踏まえて対応することが大切です

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まとめ

職場で使用される化学物質は、適切に管理しなければ労働災害や健康被害を引き起こすリスクがあります。そのため、リスクアセスメントを実施し、危険源を特定・除去し、適切な対策を講じることが重要です。クリエイト・シンプルは、簡単な質問に答えるだけでリスクを見積もることができるため、リスクアセスメントのハードルを大幅に下げるツールです。業務負担を抑えながらも、効果的にリスクを評価・管理できるため、積極的に活用し、労働災害の防止につなげましょう。また、リスクアセスメントの実施と並行して、従業員への教育・啓発も欠かせません。特に、化学物質の適切な取り扱いや安全対策についての知識を深めることが、安全な職場環境の維持に直結します。

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