設備の点検・修理・段取り替え・異常対応・試運転などの非定常作業は、普段の定常作業に比べて事故が起こりやすいと言われています。

その要因には、

  • 動力源の停止・隔離等の不備や手順変更などの「物理的・設備的要因
  • 情報共有不足、依頼側と作業側の認識のズレ、「早く終わらせなければならない」といった焦りを伴う時間的プレッシャーなどの「人的・心理的要因

があります。

初めての作業や長期間ブランクのある作業においては、いつもの手順や役割分担が機能しないことがあり、これらの要因が複合的に重なることで事故の発生リスクが高まります。

特に注意が必要なのは、「動力源は停止できているはず」「誰かが確認しているだろう」「(自分は)いつもやっている作業なので問題ない」といった先入観や思い込みが生じやすいことです。

非定常作業を安全に進めるには、個人の注意力だけに頼るのではなく、作業前に安全に行うための条件を整え、作業中の変化に気づき、必要に応じて作業を中断し、やり直しができる仕組みを用意しておくことが重要です。

本テーマは全4部構成でお届けします。
今回は、非定常作業の定義や定常作業との違いを解説した「第1部:非定常作業とは何か」を公開しています。

※心理的要因や事故の原因を深堀した「第2部:焦り・思い込み・認知バイアスが事故を招く理由を解説」も同時公開中ですので、あわせてご覧ください。

 

非定常作業とは何か

非定常作業とは何を指すのか

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、非定常作業を「保守作業、トラブル対処など、通常の作業と異なる作業」と説明しています。
また林材業労働災害防止規程では、定常作業を「日常的に反復・継続して行われ、生産計画に沿い、作業手順を定めた基準書等が整備されている作業」とし、それ以外を非定常作業として分類しています。

引用:厚生労働省 > 職場のあんぜんサイト、非定常作業[安全衛生キーワード]
林業・木材製造業労働災害防止協会 > 「林業・木材製造業労働災害防止規程(令和5年12月11日適用)」

先述の通り、非定常作業は「変更」「初めて」「久しぶり」といった3Hの要素を含み、通常どおりの手順や対応がそのまま通用しないことが多くあります。

例えば、設備が突然停止すると、復旧手順の変更や危険源の変化が発生し、作業にかかわる他の従業員も状況が把握しづらくなります。
さらに「早く作業を復旧したい」という時間的プレッシャーが加わることで、安全確認がおろそかになり、事故のリスクが高まる可能性があります。

このように非定常作業には、通常作業とは異なるさまざまなリスクが潜んでいます。
そのため、関係者全員が作業内容や潜在する危険を正しく共有し、同じ基準で行動できる環境づくりが、災害防止の重要なポイントとなります。

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定常作業と非定常作業の違いとは?認識のズレが呼ぶリスク

定常作業とは、あらかじめ決められた手順や計画に沿って、日常的に繰り返し行われる作業のことです。手順や基準が体系化しており、作業の進め方や結果に大きなばらつきが出にくいのが特徴です。

例えば、同じ設備で同じ製品を同じ条件で繰り返し生産し、担当者や役割もほとんど変わらない製造ラインの作業は、定常作業の具体例の一つです。

これに対して非定常作業は、設備停止を伴う点検やトラブル対応、部品交換、段取り替え、試運転、復旧作業などのように、通常とは手順や条件が異なる状況下で行われる作業のことです。そのため、いつもの前提が崩れやすいという特徴があります。
また、同じ作業でも、人によって「いつも」の作業かどうかの判断は異なります

例えば、工場の送風機モーターの交換を外部業者に依頼するケースを仮定します。
作業する業者にとっては、何度も行っている作業なので「いつも」の作業とみなす可能性が高いです。
一方で、依頼する側の工場では判断が異なる可能性があります。
「どの電源を止めるのか」「誰が復電を管理するのか」「他の機械に影響はないか」など、そのたびに確認や調整が必要になります。

このように、同じ作業でも受注側では定常作業とみなされる一方で、依頼側では非定常作業となる場合があり、判断はそれぞれ異なります。

この認識の違いがお互いに共有されないまま進むと、
依頼主側は「専門業者が来るから大丈夫」と考えやすくなり、
受注側は「停止・隔離は依頼主側で済んでいるはず」という思い込みが生じやすくなります。

その結果、ブレーカーを切ったつもりでも別系統が生きていたり、エアや油圧が残っていたりすることがあります。

また、別の担当者が「誰も作業していない」と思い込み、生産再開のために電源を入れてしまうといった事例が発生しやすくなります。
こうした状況は事故につながるおそれがあります。

非定常作業の危険は、作業そのものの難しさだけではなく、立場の違いによる認識のズレによっても高まります。

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現場における非定常作業の代表例(製造・建設)

林材業労働災害防止規程では、非定常作業として、異常処理作業、設備改善作業、段取り・試運転・運転確認、保守・点検・修理・検査などが挙げられています。

非定常作業の具体例は次のとおりです。

【製造現場では・・・】

① コンベヤやパレタイザー、箱詰機に製品が詰まり、設備が停止した場合
② ロールに樹脂や異物が付着した場合
③ センサー不良により誤停止した場合
④ 段取り替え後に試運転が必要な場合
⑤ 設備改善工事後に再立上げを行う場合

【建設現場では・・・】

① 仮設設備の変更
② 重機の応急修理
③ 配線・配管の切替え
④ 工程変更に伴う臨時作業

このように、通常の安定稼働から外れ、対応が必要となる場面が非定常作業に該当します。
こうした場面では、単に「危ない作業」と捉えるだけでは不十分です。

危険源がどこにあり、それがどんな形(動く・落ちる・挟まるなど)で、どのように作業者へ影響するのかまで、事前に想定しておくことが重要です。
さらに、作業中に最初に想定した状況と変わっていないかを確認し、危険があれば作業を止め、終了後に振り返り、改善できる仕組みを持つことも大切です。

参考:経済産業省 > 「非定常作業時の災害を防止するための基本的事項」
厚生労働省 > 「非定常作業の安全管理指針」
厚生労働省 > 「製造業における労働災害防止対策(設備的対策)」

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まとめ

非定常作業とは、保守作業やトラブル対応など、通常の作業とは異なる条件下で行われる作業を指します。
手順の変更や情報共有不足、想定外の危険が発生しやすいため 、非定常作業に特化した安全管理が求められます。
こうしたリスクを低減するためには、作業手順や危険ポイントを誰もが同じように理解できる教育が重要です。

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誰もが同じ認識のもとで作業に取り組める環境づくりが、災害防止につながります。
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著者:源 竜弥(みなもと たつや)
(LaKeel Online Media Service 制作チーム / 安全衛生コンテンツディレクター/ナレッジ・ウィーバー)
校正:鈴木 詩緒莉(すずき しおり)
(LaKeel Online Media Service 制作チーム / 安全衛生コラムファクトチェッカー)

 

 

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