POINT

リスクアセスメントの基本的な手順
リスクアセスメントは、基本的に以下のような手順で進められます。

  1. 危険性又は有害性の特定
  2. リスクの見積もりと優先順位つけ
  3. リスク低減措置を検討・実施する
  4. リスク低減措置導入による効果の記録と有効性を確認する

リスクアセスメントの手法
リスクアセスメントでは、リスクの大きさを見積もる方法として主に以下3つの手法がございます。

  • 加算法:分解したリスクの要素を段階分けして点数化し、それぞれの点数を加算しリスク評価を行う
  • マトリクス法:最も基本的な手法でリスクの大きさを数値化せずに表を用いて見積もり、危険性の程度を判定する
  • リスクグラフ表:リスクの要素ごとに選択式で判別してリスク評価を行う手法

リスクアセスメントの目的
リスクアセスメントの目的は、職場環境や業務における潜在危険を特定・評価し発生確率と重篤度を見積もり、除去や低減策を講ずることで労働災害や健康障害を未然に防ぎ、労働者が安全に働ける職場を整備することです。

職場の安全性を高めるためには、リスクを事前に把握し、適切な対策を講じることが重要です。そのための基本となる取り組みがリスクアセスメントです。
リスクアセスメントは、職場に潜む危険性や有害性を特定し、リスクを評価・低減する一連のプロセスを指します。これにより、労働災害の発生を未然に防ぎ、従業員が安心して働ける環境を整えることにつながります。今回は、リスクアセスメントの進め方や手法、リスクアセスメントシートの書き方などを詳しくご紹介します。職場の安全性を高めるための第一歩として、ぜひ参考にしてください。


リスクアセスメントとは

リスクアセスメントを正しく進めるには、まずリスクアセスメントで使われる言葉を把握することが必要です。
ここでは、リスクアセスメントとそれに関連する言葉を解説します。

リスクアセスメントの定義

リスクアセスメントとは、職場における潜在的な危険性や有害性を特定し、リスクを評価し、それを除去または低減するための一連の手法を指します。
事業者はリスクアセスメントの結果に基づいて適切な対策を講じる必要があり、事業者はリスクアセスメントの実施が努力義務とされています。

リスクアセスメントを実施する目的・必要性・導入効果

リスクアセスメントの主な目的は、職場に潜在する危険性や有害性をあらかじめ特定・評価し、適切な低減措置を講じることで、労働災害や健康障害を未然に防ぐことにあります。過去に顕在化した事故原因に対処するだけでなく、潜在的なリスクを「未知」のままにせず「既知」へと変え、未来を予測して必要な対策を講じることが、労働安全管理において極めて重要です。

製造業をはじめとする現場でリスクアセスメントを実施することは、事業者の努力義務を果たすのみならず、従業員や下請け業者が安心して働ける労働環境の整備や、経営層における法的リスクの回避に直結します。

さらに、リスクアセスメント導入による大きな効果として、職場全体のリスクを明確化し、対策の優先順位付けが合理的に行える点が挙げられます。
低減しきれなかった残存リスクに対して設定される「守るべきルール」の根拠も明らかになるため、現場の納得感を得やすくなります。

こうしたリスクアセスメントの一連のプロセスを職場全員で共有しながら進めることで、従業員一人ひとりの危険に対する意識が高まり、結果として組織全体に強固な安全文化を浸透させることが可能になります。

リスクと危険源の違い

「リスク」と「危険源」は、しばしば混同されがちな概念です。多くの人がこれらの用語を誤解したり、同じものだと捉えたりしてしまうことがありますが、実際にはそれぞれ異なる意味を持っています。リスクアセスメントを進めるにはリスクと危険源の違いを明確に区別して理解することが必要です。リスクとは、潜在的な危害が実際に発生する可能性の度合いと、発生した時の被害の程度を掛け合わせたものです。一方で、危険源とは、潜在的に危害の原因となり得るものを指します。

受け入れ可能なリスクと許容可能なリスク

リスクには「受け入れ可能なリスク」と「許容可能なリスク」、「許容不可能なリスク」といった3種類のリスクの考え方があります。職場のリスクを完全にゼロにすることは難しいですが、リスクの種類を理解することで、適切に対処することが可能です。

●受け入れ可能なリスク
受け入れ可能なリスクとは、危険源(hazard)によって労働者が負傷や疾病などのトラブルが発生しても、極めて軽微な影響にとどまり、大きな問題とならないリスクのことです。例えば、スポーツ選手が競技中に擦り傷を負った程度のリスクが当てはまります。

●許容可能なリスク
許容可能なリスクとは、受け入れ可能なリスクよりもトラブルの度合いが大きく、できれば避けたいリスクを指します。しかし、このようなリスクを回避するには、コストなどの面からみても現実的ではないため、許容可能なリスクとして対処することが多いです。例えば、スポーツ選手の捻挫や骨折は、受け入れ可能なリスクではないものの激しい競技の中では避けられない面もあるため、許容可能なリスクとなります。

●許容不可能なリスク
許容不可能なリスクとは、リスク低減のために必要な措置を講じた後でも残る、受け入れられないリスクを指します。このようなリスクは放置できず、直ちに改善や予防措置を取る必要があります。

安全とは

国際的には「安全」とは、2014年に「許容できないリスクがないこと」と定義されています。(ISO/IEC GUIDE 51:2014)つまり、リスクがゼロである必要はなく、“許容不可能なレベルのリスク”を取り除いた状態が安全だと見なされます。ゼロにできないリスクについては、リスクアセスメントを活用して“許容可能なレベル”まで低減することで、職場全体を安全な状態へと近づけることができると考えられています。

●Safety-Ⅱにおける安全とは
このように、従来の安全の考え方、いわゆる「Safety-Ⅰ」では、「失敗や事故が発生しない状態」を目指し、リスクや危険の除去を目指して、リスクアセスメントを行います。これはこれで非常に大切なアプローチですが、失敗を防ぐためのリアクティブ(反応的)な取り組みになる傾向があります。現代の複雑な社会システムにおいて完全に失敗を防ぐことは現実的ではなく、失敗による事故が発生してから対策を打つのでは不十分な安全管理となってしまいます。
これに対して、新しい安全の考え方である「Safety-Ⅱ」では、「すべてがうまくいくことを可能な限り多く実現する状態」を安全と再定義しています。この視点では、成功を促進するためのプロアクティブ(事前対策的)な取り組みが重視され、変化する状況に適応する能力や、日常的な調整や努力が安全の基盤となります。

例えば、大きな交差点で多くの人がぶつからずに横断歩道を渡る場面を想像してください。それぞれが動き、適応し、目的地へ向かうこの「何事もなくうまくいく日常」の背景には、多くの無意識の調整が存在しています。このような「動的な日常業務(Dynamic Non-Event)」が安全の本質なのです。

安全とは、単に「リスクをゼロにする」ことではなく、「許容できる範囲内でリスクを管理しつつ、システムがうまく機能する状態」を指します。この転換により、私たちは「失敗の防止」だけでなく、「成功を促進する」という新たな視点で、安全を捉え直すことが求められています。現代社会における安全を考える際には、従来のリスクアセスメントに加えて、この「動的で柔軟な安全」の視点で、日々の小さな努力や調整がどのようになされているのかを分析されることをお勧めします。

【関連記事】
製造業におけるリスクアセスメントの重要性とは?進め方や事例についてご紹介
ゼロ災とは?ゼロ災運動のメリットから取り組むべき労働安全衛生まで徹底解説!

目次へ戻る

リスクアセスメントの進め方

ここでは、リスクアセスメントの進め方を解説します。一般的に、以下の手順で進められます。

STEP1 危険性又は有害性を特定する
STEP2 リスクの見積もりと優先順位つけ
STEP3 リスク低減措置を検討・実施する
STEP4 リスク低減措置導入による効果の記録と有効性を確認

詳しい手順は以下です。

1.危険性又は有害性を特定する

機械・設備・原材料・作業行動・環境などにおける危険性や有害性を特定します。
危険性や有害性とは、従業員の死亡やケガや病気をもたらす物や状況のことです。例えば、安全対策が不十分な作業や有害な化学物質などが挙げられます。ヒューマンエラーや機械の故障なども念頭に置いて、作業全体の流れを確認して工程ごとの危険性や有害性を特定しましょう。従業員へヒアリングしたり、模擬作業を行って参加者同士で危険な点を指摘し合ったりすることも効果的です。また、リスクアセスメントを十分に実施することが難しい事業者は、厚生労働省の「作業別モデル対策シート」を利用しましょう。なお、職場に存在するさまざまな危険性や有害性を同時に調査することは難しいため、対象を絞って調査することが重要です。

出典:厚生労働省「作業別モデル対策シート」

2.リスクの見積もりと優先順位つけ

危険性や有害性を特定した後、それらが発生する確率、および従業員に与えるケガや病気の重篤度を見積もります。なお、リスクの評価基準は会社や評価者によって異なります。リスク評価の基準は会社や評価者によって異なるため、過去のリスクアセスメントの結果や労働災害の事例を基に基準を定めることが重要です。
重篤度の見積もりは低くなりがちですが、災害防止の観点からは、最悪の事態を想定して評価することが推奨されます。重篤度が高いと評価された場合には、その意見を尊重し、最も高いリスクを想定した評価が適切かどうかを再検討しましょう。また、担当者に加えて、実際の現場環境や作業に精通したスタッフを参加させ、さまざまな視点を取り入れることも不可欠です。
リスクを見積もった後は、見積もった点数に基づいて優先順位を設定しましょう。点数と優先順位の関係は、採用する見積もり手法によって異なります。以下は、加算式で点数を算出した場合の評価表(例)です。

リスクの評価表

点数 評価 優先度 対応措置
20~12 直ちに解決すべき問題がある IV 直ちに中止または改善する
11~9 重大な問題がある III 優先的に改善する
8~6 多少問題がある II 計画的に改善する
5以下 問題は少ない I 残っているリスクに応じて教育や人材配置をする

3.リスク低減措置を検討・実施する

リスクを見積もった後は、リスク低減措置を検討・実施します。検討すべき措置にも優先順位があり、法令で定められた事項がある場合は必ず法を遵守しなければなりません。
リスクに対して行うべき安全衛生対策内容の優先順位は、以下のとおりです。

リスク低減措置の優先順位

優先順位 対策の種類 概要 具体的な対策例
優先順位 1 リスクの除去 設計や計画の段階における危険性又は有害性の除去又は低減 ・危険な作業の廃止
・作業内容の見直し
・危険な原材料や使用器具の変更
優先順位 2 リスクの隔離 工学的対策 ・ガード、インターロック、安全装置の設置など物的な対策
優先順位 3 リスクの回避 管理的対策 ・マニュアルの整備
・立ち入り禁止措置
・作業者への安全教育訓練など
優先順位 4 リスクの低減 個人用保護具の使用 ・マスクや防護服の使用
※1〜3の措置を講じても除去・低減しきれなかったリスクに対してのみ実施

実施すべき措置が決まったら、リスクアセスメントの担当者主導のもと、優先順位に従い措置を実施します。実施後も作業者に意見を求めつつ、作業性や生産性の影響を確認して、リスクの再見積もりを行いましょう。
また、リスク低減措置の実施により新たなリスクが発生する恐れもあるため、実施後も定期的に危険性や有害性を特定することが必要です。なお、リスク低減措置を実施しても、技術的・経済的な問題でこれ以上リスクを低減できず、大きなリスクが残ってしまう場合があります。その場合は、リスクアセスメントの実施記録にリスクが残っていることを記載して、作業者に内容を周知させて教育しましょう。

4.リスク低減措置導入による効果の記録と有効性を確認する

リスク低減措置を実施した後は、その効果と有効性を確認する必要があります。効果や有効性を確認することで、次回以降のリスクアセスメントや、安全衛生水準の向上に役立てられます。
また、導入による効果の記録は、危険性や有害性の特定からリスク低減措置の実施まで、全て記載して社内全体に共有することが重要です。社内で結果を共有すれば、リスクを周知させつつ従業員の安全意識を高められます。
なお、厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」で記録すべき内容として挙げられたのは、以下の項目です。

  リスク低減措置で記録すべき内容
1 洗い出した作業
2 特定した危険性又は有害性
3 見積もったリスク
4 設定したリスク低減措置の優先度
5 実施したリスク低減措置の内容

出典:厚生労働省 > 「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」

POINT 効率性と徹底性のバランスをとる
リスクアセスメントを進める際には、効率性と徹底性とのバランスを取ることが重要です。「失敗をゼロにする」ことを目指すSafety-Ⅰ的なアプローチでは、リスクを徹底的に洗い出し、可能な限り排除することが重視されます。しかし、その結果として現場の作業負担が増大し、生産性が低下する可能性があります。また、あまりに細部にわたる規定が現場の現実と乖離すると、安全行動そのものが疎かになるリスクも生じます。

現場の実態を踏まえ、適度に徹底しつつも実効性のある方法でリスクアセスメントを実施することで、職場全体の安全文化を強化し、より効果的なリスク低減につなげましょう。
注意:ただし、ほとんどの現場では効率を重視する傾向が強くあります。もし、安全を疎かにする傾向が強い組織風土をお持ちの場合は、Safety-Ⅰの可能な限り失敗を減らす施策をまずは実践してバランスをとってください。

目次へ戻る

リスクアセスメントの手法

リスクアセスメントにおいて、リスクの大きさを見積もる代表的な3つの手法を紹介します。算出された数値が高ければ高いほど、対策の優先順位が高いリスクといえます。

加算法

加算法とは、リスクの要素を分解して要素を段階分けして点数化し、それぞれの点数を足してリスク評価を行う手法です。
要素の例として、リスクの発生頻度や検知・回避の可能性や危害の重篤度などが挙げられます。
項目を増やしやすく点数が細かく出るため、合理的な優先順位が立てられます。
以下は、加算法で使うリスクの要素の点数表の例です。

危険源にさらされる頻度

リスクの発生頻度 点数 内容の目安
頻繁 4 1日に1回程度かそれ以上
時々 2 週に1回程度
ほとんど無い 1 半年に1回程度かそれ以下

リスクが発生したときに負傷又は疾病になる可能性の区分と評価の点数

可能性 点数 内容の目安
危険検知の可能性 危険回避の可能性
確実である 6 事故が発生するまで
危険を検知する手段が無い
危険に気が付いた時点では回避できない
可能性が高い 4 十分な注意を払わないと危険を検知できない 専門的な訓練を受けていなければ
回避の可能性は低い
可能性がある 2 危険性・有害性に注目していれば
危険を検知できる
回避手段を知っていれば
十分に危険が回避できる
ほとんど無い 1 容易に危険を検知できる 気が付いた時点でケガをせずに危険を回避できる

負傷又は疾病の重篤度(災害の程度)の評価基準

重篤度 点数 内容の目安
致命傷 10 死亡や永久的労働不能につながるケガ・障害が残るケガ
重症 6 1ヶ月以上休む必要があるケガ・一度に多数の被災者を伴う災害(休業災害)
軽傷 3 1ヶ月未満で治るケガ・医師の措置を受ければ治るケガ(不休災害)
軽微 1 手当を受ければ直ちに作業に戻れるケガ

マトリクス法

マトリクス法とは、リスクの大きさを数値化せず表を用いて見積もり、危険性の程度を判定する方法です。
リスクアセスメントでは、横軸に「重篤度」、縦軸に「リスクの発生頻度」を設定し、2つの軸を基にリスクのレベルを評価し、適切な対応策を決定します。この手法は、リスク低減措置の実施前と実施後の変化が分かりやすく、簡単にリスク評価ができるため、最も基本的で使いやすい手法とされています。
マトリクス法で使われる表の一例は次の通りです。

マトリクス法の表の一例

リスクの発生頻度 重篤度
致命的・重大 中程度 軽度
可能性が高い 3 3 2
可能性がある 3 2 1
ほとんど無い 2 1 1

リスクグラフ法

リスクグラフ法とは、リスクの要素ごとに選択式で判別してリスク評価を行う手法です。一般的に、「危害の重篤度」「危険源にさらされる頻度」「回避の可能性」などに基づいて評価します。
以下はリスクグラフ法で使われる表の一例です。

リスクグラフ法の表の一例

危害の重篤度 危険源にさらされる頻度 回避の可能性 リスク指数 優先度
重度 日常的 困難 5
可能 4
まれ 困難 3
可能 2
軽度 日常的 2
まれ 1

目次へ戻る

リスクアセスメントシートの書き方

リスクアセスメントシートとは、リスクアセスメントの実施内容やリスクの見積もりなどを記録するシートのことです。
ここでは、厚生労働省「リスクアセスメント記録表」の項目をもとに、リスクアセスメントシートの書き方を紹介します。

参考:厚生労働省『リスクアセスメント記録表』
※リンクをクリックするとExcelファイルがダウンロードされます

1.基本項目

基本項目では、リスクアセスメント対象職場や実施管理者と、実施担当者の名前・実施日を記載します。リスクアセスメント対象職場に記載するのは、工場や事業所の名前です。実施担当者が複数人いる場合は、すべて記載しましょう。

2.作業名/工具、機械設備名

「フォークリフトによる運搬作業」や「鉄板加工作業」など、具体的な作業名を記載します。機械設備が対象となる場合は「天井クレーン1号機」というように、どの機械設備かわかるように記載しましょう。

3.危険性・有害性により発生のおそれのある災害

この項目では、作業環境における危険性や有害性によって発生する可能性のある災害を具体的に記載します。
災害発生のメカニズムを正確に把握し、防止策を適切に講じるため、「~なので、~する」「~なので、~になる」といった因果関係を明確に示す表現を用いることが重要です。

▼記載例

  • 「高さ1.5mの場所で作業するので、バランスを崩すと転落する」
  • 「切削作業中に切粉が飛散するので、目に入り網膜裂孔を引き起こす可能性がある」
  • 「重量物を持ち上げる作業があるので、無理な体勢を取ると腰を痛める」
  • 「可動部の近くで作業するので、誤って手を巻き込まれるおそれがある」

このように、具体的な作業状況とリスクを明確に記録することで、リスク低減措置の検討や効果的な安全対策の実施につなげることができます

4.既存の災害防止対策/リスクの見積もり

目視確認や従業員への注意喚起など、現在行っている災害防止対策を記載します。また、重篤度・可能性・優先度の項目から、リスクの見積もりも記載します。すでに導入されている安全対策を明確にすることで、リスクを適切に評価し、追加の対策が必要かどうかを判断しやすくなります。
また、リスクの見積もりでは「重篤度」「発生可能性」「優先度」の観点から、リスクレベルを評価します。

5.リスク低減措置案/措置実施後の想定リスクの見積もり

この項目では、リスクを低減するための具体的な対策(リスク低減措置案)と、措置を講じた後のリスクレベルの見積もりを記載します。リスク低減措置を検討する際は、単に対策を考えるだけでなく、「その対策によってどの程度リスクが低減するのか」を明確にすることが重要です。
また、リスクの見積もりは、実施前と同じ評価基準で行うことで、リスク低減の効果を適切に比較・評価できます。

6.備考

備考欄には、残っているリスクへの対応を記載します。共有すべき事項がある場合は、必要に応じて記載しましょう。

目次へ戻る

形だけの評価シートから脱却するための4つのチェックポイント

リスクアセスメントが「提出のための書類作成」という事務作業に陥り、現場に潜む潜在的な危険有害要因が見過ごされるケースは少なくありません。形骸化を打破し、リスク低減措置の実効性を担保するには、以下の4つの視点を運用に組み込んでみてはいかがでしょうか。

1.非定常作業・4M変化点の動的リスク捕捉
労働災害の多くは、機械故障時の復旧、清掃、調整といった非定常作業で発生しています。手順書通りの定型作業の評価に留まらず、現場で突発的に発生するイレギュラーな業務も網羅する必要があります。
特に、4M(人・機械・材料・方法)の変化点に着目し、作業者の主観的な「やりづらさ」や「無理な姿勢」を吸い上げる仕組みを構築しましょう。

2. 残留リスクの言語化と現場への徹底周知
リスクアセスメントの目的はシートの完成ではなく、現場へのフィードバックです。許容可能と判定されたリスクや、対策後も物理的に取り除けない残留リスクが、作業者一人ひとりに自分ゴトとして伝わっているでしょうか。
評価結果を掲示するだけでなく、ツールボックスミーティング(TBM)等の場で、「今日の作業条件下におけるリスク」として具体的に言語化できているかが、労働災害を防ぐ分岐点となります。

3. 「見積り根拠」の客観性と再現性の担保
頻度・可能性・重篤度を数値化する際、判定根拠が曖昧では、対策の優先順位を見誤ります。
「過去〇年のヒヤリハット累積件数」や「類似設備での労働災害事例」といった客観的データに基づき、
誰が評価しても同じ結果になる判定基準を確立してください。妥当性のあるデータに基づき、リスク低減措置の優先順位に従って対策を講じましょう。

4. 管理基準の明確化と「5S」による評価の前提維持
リスクの見積りは、現場の整理・整頓・清掃(5S)が維持されていることを前提としています。床の油漏れや通路の荷物放置といった不安全状態が放置されていれば、どんなに精緻なリスクアセスメント評価シートも無意味化します。リスクアセスメントを回す前提として、現場の基本ルールが守られているかを評価に組み込むことで、書類上の数値と現場の実態との乖離を防ぐことができます。

リスクアセスメントは、単なるシート作成業務ではありません。現場の違和感を拾い上げ、対策に優先順位をつけ、作業者の安全を論理的に守るために行われます。これら4つのチェックポイントを軸に、自社のリスクアセスメントの実効性を向上させましょう。

目次へ戻る

リスクアセスメントの業種別実施例

リスクアセスメントを実効性あるものにするためには、汎用的な手法に加え、各現場特有の物理的特性や動的リスクを捉える必要があります。ここでは業種別に、リスクアセスメント実施例をご紹介します。

1.自動車部品製造:自動化ラインにおける、協働ロボットの接触リスク
従来の固定式ガード内での作業とは異なり、人機協働ラインではロボットの関節可動域や停止距離が重要です。センサーの死角や、システムエラーによる予期せぬ動作を想定したリスク低減が求められます。

2. 金属加工・プレス成形:金型交換時の重量物取扱いと非定常作業
プレス運転中よりも、段取り替え時におけるクレーン吊り作業や金型の微調整に重大災害のリスクが潜んでいます。作業者の身体的負荷(腰痛リスク)だけでなく、玉掛けミスによる落下や、指差し呼称の省略が招く挟まれを、タスク分解型のリスク評価で詳細に洗い出します。

3. 化学製品製造:可燃性物質の静電気放電による火災・爆発リスク
化学プラントでは、設備の腐食や経年劣化という時間軸のリスクに加え、冬季の低湿度による静電気放電が発火源となるケースが多数見られます。HAZOP等の手法を応用し、配管内の流速制限や接地の健全性確認など、化学工学的な知見に基づいたハード・ソフト両面の評価が不可欠です。

4. 電子部品・半導体:クリーンルーム内の化学物質曝露と酸欠
微細な洗浄工程で使用される有機溶剤や特殊高圧ガスは、少量であっても漏洩時のリスクが甚大です。換気設備の能力計算に基づいた気中濃度のシミュレーションを行い、保護具の選定だけでなく、警報装置の設置場所や避難動線の有効性までをリスクアセスメントの範囲に含めます。

5. 食品・医薬品製造:高速回転する撹拌・充填機の清掃時リスク
衛生管理のために頻繁に行われる分解清掃では、インターロックを無効化した状態での作業が常態化しがちです。洗浄水の飛散による感電リスクや、駆動部への巻き込まれを防止するため、LOTO(ロックアウト・タグアウト)の徹底をリスク低減策の柱として組み込みます。

6. 物流・鋼材センター:大型フォークリフトと歩車分離の動線リスク
重量物を扱う物流現場では、死角の多い大型車両と作業者の接触が最大の懸念事項です。単なる注意喚起に留まらず、AIカメラによる検知システムの導入や、物理的なガードレール設置による「人と車両の完全分離」を優先順位の高い対策として評価シートへ反映させます。

目次へ戻る

まとめ

職場の安全を確保するために、リスクアセスメントは欠かせない取り組みです。技術の進化や作業環境の変化により、新たなリスクが生まれる中、適切な手法でリスクを特定・評価し、効果的な低減策を講じることが求められています。リスクアセスメントを進める際には、加算法やマトリクス法などを活用し、リスクの発生頻度や影響を正確に評価することが重要です。また、リスクアセスメントシートには低減措置案やリスクの見積もりを詳細に記録し、対策の有効性を明確にしましょう。リスクアセスメントを進める際には、「効率性」と「徹底性」とのバランスを取ることに注意が必要です。過度に細かいルールを徹底しようとすると、現場の負担が増し、生産性が下がることがあります。一方で、簡略化しすぎると安全対策が不十分になり、リスクを十分に低減できない恐れもあります。そのため、現場の実態を考慮し、現実的で実行可能な方法を取り入れることが大切です。

リスクアセスメントを効果的に行うには、職場の状況に合った現実的な方法で、従業員と協力しながら、実際に役立つ安全対策を進めていきましょう。その上で、対策がうまくいっているかを確認し、必要に応じて改善を重ねることで、安全への取り組みを職場全体に定着させていきましょう。
注意:ただし、ほとんどの現場では効率を重視する傾向が強くあります。もし、安全を疎かにする傾向が強い組織風土をお持ちの場合は、Safety-Ⅰの可能な限り失敗を減らす施策をまずは実践してバランスをとってください。

リスクアセスメントは一度行って終わりではなく、継続的な見直しと改善が必要です。適切な教育やツールを活用し、安全衛生教育を行う際は、LaKeel Online Media Serviceの活用がおすすめです。LaKeel Online Media Serviceには、安全衛生に関するアニメーション動画が700本以上用意されており、誰でも簡単に学べるのが魅力です。サンプル動画も用意しているので、ぜひ一度体験してみてください。



目次へ戻る

LaKeel Online Media Serviceの動画を

無料でお試しいただけます。