
労働災害の中でも、意外と多発しているのが「転倒災害」です。職場におけるさまざまな原因によって起こるこの転倒災害ですが、労働者の高齢化にも一因があるようです。高齢者が転倒した場合、骨の強度の減少などの事由により骨折などのリスクが若年層の労働者に比べて高くなります。職場における転倒災害の発生を減少させるための取り組みは重要です。
中でも労働安全衛生教育を徹底し、従業員が自ら予防のために取り組む体制づくりが欠かせません。
今回は、転倒災害とは何か、そして転倒災害防止策、転倒災害防止を含む従業員教育の効果的な手法をご紹介します。
転倒災害とは
転倒災害とは、就業中や通勤時において、労働者が作業床などの同一平面上でバランスを崩し、「滑る」「つまずく」「踏み外す」ことによって発生する労働災害を指します。安全衛生管理の文脈では、重力の影響を強く受ける「墜落・転落」とは区別されますが、歩行や方向転換といった日常的な動作に起因するため、作業環境と人的要因が複雑に絡み合うのが特徴です。
製造現場においては、単なる不注意による事故ではなく、床面の動摩擦係数の低下(水・油・粉塵による汚染)や、5Sの不備といった「物理的不安全状態」が背景に存在します。これに労働者の身体機能の変化や加齢に伴う歩行バランスの低下といった「人的不安全行動」が組み合わさることで、転倒災害発生リスクが高まります。
特に近年の製造現場では、自動化が進み重篤な機械災害が減少する一方で、人による「歩行・運搬」が介在するプロセスでの転倒が目立っています。一度発生すれば、骨折等の重症化による長期休業や後遺障害を招くリスクがあります。
また、近年の労働力の高年齢化に伴い、転倒災害による症状の重篤化、休業期間の長期化が進みつつあります。
転倒災害は企業の安全配慮義務の履行、および労働力の定着という観点からも、各現場において防止策の実施や安全衛生教育の実施が求められています。
労働災害の分類における「転倒」とは?
労働災害の型式分類における「転倒」とは、原則として作業者が同一平面上でバランスを崩し、倒れる現象を指します。
具体的には、床面での「滑り」「つまずき」「踏み外し」が起点となる事象であり、フォークリフト等の車両系建設機械や運搬車両とともに転倒した場合も、転倒災害としてカウントされます。
ただし、発生要因の主従関係によって分類が厳格に区別される点に注意が必要です。
例えば、墜落・転落のように高低差を伴う移動は含まれず、また一般道での交通事故(道路交通事故)に起因する転倒も転倒災害からは除外されます。
さらに、有害物への接触や感電によって二次的に転倒・転落したケースでは、根本原因である「化学物質等との接触」や「感電」が優先され、転倒災害からは除外されます。
再発防止策の検討時には「物理的な転倒そのものが事故の直接原因であるか」を基準に検討していきます。
転倒災害の典型的なパターン
転倒災害の典型的なパターンは、大きく分けて「滑り」「つまずき」「踏み外し」の3つといわれています。「滑り」は濡れた床で滑ることによる転倒、「つまずき」は台車などに足を引っかけてしまうことによる転倒、「踏み外し」は階段や段差などを踏み外してしまうことによる転倒です。
転倒災害の事例
転倒災害の主なパターンごとに、どのような発生事例があるかをご紹介します。
・滑り
水をはじきやすい床素材の場合、少しの雨などでも容易に転倒に繋がります。具体的には鉄や大理石、タイルなどの床です。
また、労働者が正しく安全靴を着用していなかったり、長年の使用で底がすり減り、耐滑性が損なわれた靴を着用していたりすることによる滑りも発生しております。
・つまずき
作業スペースの中に凹凸や段差がある場合によく発生します。階段のような大きな段差でなくとも、電気コードやLANケーブルなどの配線を隠すプラスチックのカバーにつまずく事例も多く発生しております。特に高齢者の方は、自分が思っているほど足が上がっていないため、物につまずいて転倒する事が多いようです。
また、床に放置されていた段ボールや商品につまずく事例も多く見られますし、大きな荷物を持っていて、足元の視界が悪い状態でつまずく事例も多発しております。
・踏み外し
つまずきの事例でもご紹介しましたが、大きな荷物を抱え、足元の視界が悪い状態で良く発生するのが踏み外しです。段差がそこにあることに気が付かない、段差の正確な高さを把握できていないことで踏み外しは発生します。
近年では大きな荷物だけでなく、歩きスマホで段差に気づかず踏み外すような事例も見られます。
また、転倒災害が発生する事例を、業種別にご紹介します。
・化学工場
化学工場内で扱うさまざまな液体漏洩に起因する事故が多い傾向にあります。
配管の継手から微量に漏れ出た潤滑油や化学薬品が床面に油膜を形成し、防滑靴を履いた作業員がバルブ操作のために踏み込んだ際、足元をすくわれて後頭部を強打する事例が散見されます。視認しにくい無色透明の液体や、洗浄後の残留水分は、歩行動作における動摩擦係数を急激に低下させるため、致命的な転倒を招く要因となります。
・金属加工・機械組立工場
床面に飛散した切削屑(キリコ)や微細な金属粉が「ベアリング」のような役割を果たし、旋回動作を行った作業員がバランスを崩すケースが典型的です。また、定位置作業から移動に転じる際、足元に一時置きされた治具や延長コードに爪先を引っ掛け、前方へ突っ込む形で転倒し、手をついた際に手首を骨折する転倒災害も後を絶ちません。
・設備保全・メンテナンス作業
メンテナンス中の転倒災害としては、機械設備の裏側やピット周辺での転倒が多く見られます。
日常的な動線ではない狭小な場所での作業中、床面に突出したアンカーボルトや配管に足を取られるケースです。暗所での作業や、工具を手にした状態での無理な姿勢は、咄嗟の防御動作を遅らせるため、装置の角に身体を打ち付けるなどの二次被害を伴う重篤な災害に繋がりやすいのが特徴です。
・食品製造・加工現場
床面に落ちた食材や水分・油分による転倒に加え、床面の結露や清掃用ホースの存在が大きなリスクとなります。
特に排水溝への傾斜がある床面では、水濡れに加えて「勾配」という物理的要因が加わるため、台車を押して移動する際に踏ん張りが効かず、スリップ自転倒を起こす事例が目立ちます。低温環境下の作業場では、床面の凍結による転倒も多発します。
・物流・倉庫現場
荷揃えエリアに放置されたストレッチフィルムの切れ端や、パレットの破片といった「異物」によるつまずきが頻発しています。フォークリフトの進路を避けるために急ぎ足で移動したり、手荷物で足元が見えない状態で歩行したりする際、わずか数センチの段差やゴミに足を取られ、荷物とともに転倒して圧迫骨折を負う事態も発生しています。
転倒災害発生状況
厚生労働省の統計によると、令和3(2021)年の休業4日以上の事故の型別労働災害死傷者数は、新型コロナウイルス感染症への罹患を除くと、最多は転倒災害という調査結果が出ています(33,672名、約23%。出典:厚生労働省 令和3年労働災害発生状況)。
転倒災害の発生件数は増加傾向にあり、2011年には25,000名程度であった転倒災害の死傷者数は、2021年の33,672名と、約8,000名近く増加しているのです。労働災害死傷者数における転倒災害の割合も、2009年以降20%を下回ることがなく、転倒災害がいかに身近な災害であり、注意が必要なのかを実感できるのではないでしょうか。
転倒災害防止策
どのような職場においても、転倒災害防止のための取り組みは欠かせません。特に転倒災害が起きたことがある職場では、再発防止策の実施が必要です。転倒災害防止策には、主に職場環境の改善と従業員教育が重要になってきます。
転倒災害防止策の主なものを取り上げます。
転倒しにくい作業方法で業務を行う
常に時間に余裕をもって行動するようにする、急ぐ必要があるときもあせらず落ち着いて行動する、滑りやすい場所では歩幅を小さくする、照明を用いて適切な明るさを確保してものにつまずかないようにするなど、転倒しにくい作業方法を心がけます。
歩き方の見直しも大切です。すり足で歩を進めると歩幅が狭くなり、転倒しやすくなるといわれていますので、歩幅を広げ、つま先でしっかりと地面を蹴ってかかとから着地すると転倒しにくくなります。
5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底
滑りにくい靴の提供、転倒防止に配慮した床の設置など設備面の対策に加え、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底する管理面の対策など、あらかじめ転倒しにくい環境づくりを行うことも重要です。
整理・整頓・清掃・清潔・しつけの「5S」を徹底することで、歩行場所に物が放置されている、床面の水、油、粉類等の汚れが取り除かれていない、床面の凹凸、段差等の問題を解消することが出来ます。徹底していくには一人ひとりの意識付けが求められます。標語の作成や、5Sのイラストポスターといった従来の施策だけでなく、職場として労働安全衛生教育の機会を設け、実施していくことが、5Sの徹底、従業員の安全に繋がります。
転倒災害対策の事例
転倒災害の主なパターンごとに、転倒防止の具体的事例をご紹介します。
・滑り
床が滑りやすい素材の場合、摩擦力を上げることで対策できます。そのため、凹凸がついている素材や、水を吸いやすい素材が床の素材には最適です。カーペットやゴムシートを敷くのも良いでしょう。(食品を扱う現場では微生物や害虫の発生等衛生上の問題がある場所では使用はできません)
また、労働者の安全靴について、指定のものを正しく履いているかをチェックしましょう。底がすり減った安全靴を履き続けないよう、靴の交換サイクルを決めることも有効です。
・つまずき
まず「床にものを置かない」を徹底します。納品物やすぐ使うものほど床に置かれがちですが、一時保管用のスペースを決めておくと、床に放置される荷物を減らすことができます。
目に留まりにくい段差はトラ柄テープで目立つようにする、スロープを設置し段差をなくすことでも対策が可能です。また、高齢者の方にもやさしい環境づくりも大切です。
床にある配線は壁に沿って貼り直します。なるべく足がはみ出しにくい机・いす・パーテーションの導入も検討しましょう。
・踏み外し
こちらもつまずき同様、視認性の悪い段差にトラ柄テープを貼る、スロープを設置する対策が有効です。
古い建物の場合は段差の距離が均一ではない危ない階段が残っている場合があります。そうした危険な階段が施設内に無いか確認しておくことも大切です。
また、大きな荷物の運搬には台車を活用するルールを徹底しましょう。頻繁に大きな荷物を運搬するエリアには、専用の台車を設置し、エレベーター等を必ず使用するルールにすることも有効です。
当然、歩きスマホは危険です。慣れた作業スペースや社内でも禁止を徹底しましょう。
「エイジフレンドリーガイドライン」の活用
厚生労働省が令和2年3月に策定した「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」を活用しましょう。厚生労働省では働く高齢者の特性に配慮した職場環境への改善を推進しており、高齢者を使用、もしくは今後使用する予定の事業場で、事業者と労働者に求められる取組を具体的に示したものです。
主に5つの取組、「安全衛生管理体制の確立」「職場環境の改善」「高年齢労働者の健康や体力の状況の把握」「高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応」「安全衛生教育」が示されています。
特に職場環境の改善においては身体機能の低下を補う設備・装置の導入、高年齢労働者の特性を考慮した作業管理といったハード面、ソフト面の対策が具体的に示されていますので、参考にすることができます。また、加齢に伴う運動能力の変化を理解して“転倒防止体操”などの対策を行うことで、転倒する確率を減らすことが可能になります。
従業員への労働安全衛生教育を行う
従業員教育は、5Sのうち「しつけ」に該当するものです。
職場においてただ作業方法を変更したり、設備的な改善を行ったりするだけでは、十分に災害防止効果を発揮できません。そこで重要になってくるのが、従業員への労働安全衛生教育です。
教育をしなければ、何が危険なのか?作業手順やルールはなぜ出来たのか?その理由が理解できないため、重要性を認知して行動することができません。効果的な教育を行えば、従業員の安全行動も定着しやすくなり、加えて危険予知能力や危険回避能力も身に付けることが可能です。もし従業員の不安全行動が減少し、対処、監視、予測、学習する能力が高まると労働災害の発生確率は減少します。そのためにも従業員教育は不可欠なのです。
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いくら教育を実施しても、従業員自ら転倒災害の防止のために意識的に行動するようにならなければ、転倒災害の減少にはつながりません。
教育効果を出すためには、たとえ学ぶ意欲のない従業員であっても、学びやすい教育方法を採用することが重要になってきます。
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モバイル機器の使用もできるため、従業員はいつでもどこでも学びやすいのも特長であり、多言語対応も可能であるため、外国人従業員への教育にも利用できます。
また教育担当者向けの受講者管理ツールも備わっており、教育スケジュール、閲覧動画の選択、視聴履歴管理、テストの自動採点や結果の把握などの機能で管理を適切に実施することもできます。
LaKeel Online Media Serviceは、転倒災害防止の内容も含んでおり、転倒災害防止のための従業員教育に最適なツールです。
まとめ
転倒災害は、労働災害の中でも特に件数の多い深刻な災害の一つです。今後、ますます労働者の高齢化が進んでいく中で、より一層、防止策を強化していく必要があります。環境面の改善と共に、安全衛生教育を徹底していくことが重要です。
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