事業者は、労働者を雇入れる際には、労働者の安全と健康を守るための雇入れ時の安全衛生教育を行うよう法令で義務付けられており、それを「雇入れ時教育」と呼んでいます。
今回は、雇入れ時教育の概要から目的、実施内容、2024年4月からの拡充などの関連事項について解説します。雇入れ時教育を実施する際に役立つ教育ツールについても合わせてご紹介しますので、ぜひご参考にしてください。
雇入れ時教育とは?
まずは、雇入れ時教育の概要を確認していきましょう。
雇入れ時教育とは?
雇入れ時教育とは、労働安全衛生法第59条第1項に基づき、新規採用したすべての労働者に行うべき、所定の安全衛生教育を指します。
雇入れ時教育の目的
雇入れ時教育の大きな目的は、労働災害を防止することです。労働者がこれから仕事を行う際に、自身の作業における危険性や有害性を理解し、安全に作業を行うために必要な知識や技能を教育によって習得させることで、労働災害を未然に防止することに役立てます。
事業者の義務と罰則
事業者は労働者を雇い入れた際に、その従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行うことが義務付けられています。
なお、この規定に違反した場合、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
雇入れ時教育の実施内容
雇入れ時教育では、どのようなことを実施すれば良いのでしょうか。労働安全衛生法に定められた実施内容を見ていきましょう。
1.機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
2.安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
3.作業手順に関すること。
4.作業開始時の点検に関すること。
5.当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
6.整理、整頓及び清潔の保持に関すること。
7.事故時等における応急措置及び退避に関すること。
8.前各号に掲げるものの他、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項。
労働者が新たに就く業務について、安全に作業を行うためには、あらかじめどのような危険があり、どのようなことに気をつけなければならないのかを教える必要があります。それによって自分の行う作業を安全かつ正しい作業手順で遂行してくことができます。
雇入れ時教育の拡充について
雇入れ時教育に関して、近年、実施内容にかかわる事項について変更点がありましたのでご紹介します。
雇入れ時教育の拡充
雇入れ時等教育として定められていた実施内容は、従来、一部の内容は業種によっては省略しても良いことになっていました。
具体的にいえば、先に示した8つの実施内容のうち、次の4つの項目は、所定の業種以外の業種では省略できていました。
1.機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
2.安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
3.作業手順に関すること。
4.作業開始時の点検に関すること。
以前は下記の業種以外は1~4は省略可能
・林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業
・製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業
2024年(令和6年)4月1日より、この省略規定が廃止となり、これまで1~4の項目を省略可能とされていた業種についても、安全衛生教育の実施が義務化されました。よって、現在は全業種で1から8のすべての内容を実施する必要があります。
雇入れ時教育の流れ
雇入れ時教育で定められた実施内容はあるものの、実際に教育をどのように実施すればよいのか、どのような内容を含めるべきか、効果的な方法や資料の選び方に悩んでいる教育担当者も多いのではないでしょうか。厚生労働省が公表している未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアルでは以下のように記されています。
雇入れ時教育の流れ
①職場にはさまざまな危険があることを理解させる
②「かもしれない」で危険の意識をもたせる
③さまざまな安全衛生のルールや活動があることを理解させる
④安全な作業をみんなで実施し職場を安全に
⑤もし異常事態や労働災害が発生したときの対応を身につけさせる
出典:厚生労働省「未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル」
雇入れ時の教育のカリキュラムについて
雇入れ時教育には、法律で定められたカリキュラムはありません。各職場の業務に応じて、カリキュラムを準備するとよいでしょう。以下は、3~4時間程度かけて雇入れ時教育を行う場合のカリキュラム例です。
・イントロダクション
・仕事の基本について
・労働災害と安全衛生管理
・安全に仕事をするためのルール
・安全な仕事の進め方
・クロージング
雇入れ時教育をより効果的かつ効率的に実施するためには、具体的な内容や手順が参考になります。「もっと楽に、しかし確実に雇入れ時教育を行いたい」「非効率な教育を改善したい」と思われている担当者の方に向けた雇い入れ時教育の参考資料を準備しております。ぜひダウンロードして、雇い入れ時教育にお役立てください。
雇入れ時の安全衛生教育の実施方法
雇入れ時の安全衛生教育には、大きく分けて3つの実施方法があります。それぞれ特有のメリットとデメリットが存在しますので、目的や状況に最も合った方法を選び、効果的な教育を実施しましょう。必要に応じて、これらの方法を組み合わせることで、教育の効果をさらに高めることも可能です。
・社内で実施する
・外部機関への委託
・eラーニング
対象者別雇入れ時教育を実施するポイント
雇入れ時の安全衛生教育を効果的に行うためには、対象者の特性やニーズに合わせた工夫が必要です。以下に、それぞれに応じたポイントを紹介します。
正社員・非正規労働者
・正社員と非正規労働者の双方を同じ安全衛生の取り組みに参加させ、協力して取り組んでもらう
・作業者間で食い違いが出ないよう、安全衛生活動の作業内容は標準化する
・派遣労働者の場合、派遣元に教育を丸投げせず、カリキュラムや指導内容を伝えて教育を依頼する
高齢労働者
・老化で低下した身体機能に合わせて作業環境の配慮をする(重量物の取り扱い、作業スピードなど)
・経験を重視し、ルールを軽視する傾向があるので、ルール遵守を徹底する
・より若い労働者とコミュニケーションを取る機会を作るカリキュラムや指導内容を伝えて教育を依頼する
・記憶力が衰えているため、複数回教育する
外国人労働者
・言葉や生活習慣の違いを踏まえ、イラストや動画を取り入れた教育をする
・異常事態が起きた際に分かるよう、危険を知らせる日本語を伝える
・意思疎通が不足しないよう、平易な言葉遣いで、言葉を省略せずゆっくりと話す
まとめ
今回は、雇入れ時教育の概要や実施内容、カリキュラムや実施のポイントなどについてご紹介しました。事業者がこの教育を効果的かつ効率的に実施することは、職場の安全と健康を守るために非常に重要です。そのためには、労働者の特性に応じた方法を工夫し、実施することが求められます。より効果の高い雇入れ時教育の参考にしていただければ幸いです。
教育担当者の中には、法改正による雇入れ時教育のカリキュラム省略規定の廃止を受け、どのように適切な教育を進めるべきか悩んでいる方が多いのではないでしょうか。また、現在雇入れ時教育を行っているものの、十分な効果が出ていないと感じている方もいるかもしれません。教育担当者は他の業務を兼任していることも多く、教育に注げる時間や人的コストに限りがあるため、効率的かつ効果的な方法を模索している方もいるのではないでしょうか。その際にはラキールが提供する、LaKeel Online Media Serviceがおすすめです。
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