トヨタ自動車株式会社が実施する重大災害防止活動「STOP6活動」は、造業を中心に多くの企業で導入され、その高い効果が注目されています。今回は、STOP6活動の概要をはじめ、6つの危険源、それに伴うリスク、そして実践的な対策例をご紹介します。重大災害ゼロを目指す取り組みのヒントとして、ぜひ参考にしてください。


STOP6活動とは?

STOP6活動とは、トヨタ自動車が日々の自動車製造において、事故を未然に防ぐために組織的に実施している、重大災害を防止する活動です。STOP6の読み方は「ストップシックス」で、「Safety TOYOTA 0(Zero Accident)Project 6項目」の略称です。

同社では、自動車産業における災害を分析した結果、大けがや死亡を伴う重大事故が主に6種類の災害から発生していることを突き止めました。そこで、これら6種類の災害に対応する鉄則を徹底的に学び、防止する取り組みをSTOP6活動として展開しています。

6つの重大災害

1.挟まれ・巻き込まれ
2.重量物による接触
3.車両との接触
4.堕落・落下
5.感電
6.高熱物との接触

この6種類に自社特有の災害を1つ、もしくはそれ以上をプラスして、それぞれの鉄則を学んでいく活動を「STOP6プラス1」と呼び、広く実践されています。

重大災害(重災)とは

国が定義している重大災害とは、「不休も含む、一時に3人以上の労働者が業務上死傷またはり病した災害」を指します。

厚生労働省の統計によれば、令和5年の死亡災害は755人で、業種別では建設業が最も多く、次いで製造業、運輸交通業と続きます。この死亡災害の事故の型について、建設業では墜落・転落、交通事故(道路)、飛来・落下が多く、製造業では、はさまれ・巻き込まれ、墜落・転落が多いことがわかっています。

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6つの危険源とは?それぞれのリスクを解説!

重大災害が起きる作業には、大きなエネルギーが働いており、それが人に向かうと危険エネルギーとなって重大な死傷事故を引き起こします。
6つの重大災害にはそれぞれ危険源として、次の6つがあります。なお、6つの危険源の英語表記の頭文字をとると「ABCDEF」となり、覚えやすくなっています。それぞれのリスクと起こり得る労働災害を見ていきましょう。

動力(Actuator)

挟まれや巻き込まれの危険源は主に動力にあります。特に製造現場で多く使用されるモーターやシリンダを備えた機器がこれに該当します。機械が停止していると誤認したり、第三者によって意図せず起動されたりすることで、重大災害が発生するケースにつながります。

重量物(Block heavy objects)

重量物とはクレーンで吊って移動させるようなあらゆる重量物や金型、台車などです。これらの重量物は、クレーン操作中の移動時に人に接触したり、ベルトの緩みにより落下したりすることで、骨折や死亡といった重大なリスクを伴うことがあります。

車両(Car)

車両とはフォークリフトやトラックなどを指します。これらの車両と接触すると、大けがや死亡のリスクが伴います。また、重量物や多数の物を積載している車両の場合、接触によって積載物が転倒・転がる可能性があり、リスクがさらに高まります。

高所(Drop)

高い位置にある作業場所は、堕落・落下の危険源となります。建設業では、足場や高所作業場所の開口部、昇降設備など、すべてにリスクが伴います。足や手の滑り、さらには屋外での突風などが原因となり、堕落・落下事故が発生しています。

電気(Electric shock)

製造機械の電源コードなどが原因で感電が発生することがあります。特に、制御盤のように高圧電気を扱う部位では、接触によって熱傷や筋肉損傷などのリスクが生じます。感電は電圧が高くなるほど、死亡リスクが大幅に増加します。

高熱物(Fire)

製造現場では、50度以上の高熱物や、爆発や火災のリスクを伴う物質を取り扱うことがあります。これらに接触すると、熱傷を負うだけでなく、爆発や火災が発生する可能性があり、重大な事故につながる恐れがあります。

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STOP6活動でやるべき対策

6つの危険源ごとに対策が必要です。全体で「18の鉄則」として定められていますので、確認していきましょう。18の鉄則は(1)~(18)で示しています。

動力(Actuator)

(1)災害リスクのある機械は柵・カバーで囲う
(2)・人は、機内に入る場合『正しく止める』
・ロックアウトで第3者起動を防止する
(3)・機械は、人が止め忘れても『ポカヨケで止まる』ようにする
・止められる設備にする

動力源となる機器から作業者を締め出す、つまりロックアウトすることが重要です。柵やカバーで物理的に遮断するほか、機械設備のブレーカー・スイッチ・バルブ等のエネルギー源を物理的に遮断して施錠することで、再稼働できない状態にします。
「ポカヨケ」とは人による誤操作などのミスが起こらない仕組みをあらかじめ作っておくことを指します。機械は万が一、止め忘れても自動停止する仕組みにするなどの事前予防策を行っておくことが重要です。

【関連コラム】ロックアウトタグアウトとは?

重量物(Block heavy objects )

(4)『低く保管、低く搬送』
(5)工事計画で転倒、横振れ防止を確認
(6)吊り荷、移動中の重量物には近づかない

重量物は、できるだけ低い位置に保つことで、万が一落下したときなどのエネルギーが小さくなるため、被害が低減されます。また建設業の場合は工事計画を参照し、重量物を上げ下げしながら移動させなければならないケースでは、転倒や横揺れのリスクを想定して対策しておく必要があります。
作業者が移動している最中の重量物には決して近づかない、手足や身体を絶対に入れない意識も重要です。

車両(Car)

(7)歩車分離
(8)・バック時は毎回後方確認
・シートベルトとヘルメット着用
(9)指定経路以外を走行しない

歩行路とフォークリフトなどの車路を明確に区分けするために白線やレーザーの表示、ポールとチェーン、遮断機の設置などが挙げられます。
車両の運転者は必ず後方確認の上バックする、万が一に備えてシートベルトとヘルメット着用する、人への接触や横転のリスクを回避するため指定経路以外を走行しないことも鉄則です。

高所(Drop)

(10)高所では『常に安全帯を連結』
(11)計画外の作業はしない
(12)・工事計画で墜落防止を確認
・作業前、2時間おき、場面変化でKY

墜落・転落災害を防ぐために、常に墜落制止用器具を親綱などに連結します。そして工事・作業計画書を確認し、墜落のリスクのある場所や作業を特定して防止措置を取りましょう。例として高所の床の端、開口部に囲いや手すり、覆いなどを設けます。

作業計画にはない行動により墜落した事故も実際に起きているため、計画外の作業はしないことも重要です。

作業前と作業中2時間おき、場面変化の際に「どんな危険が起こり得るか?」を予測して事前対策を取る危険予知(KY)を行います。

電気(Electric shock)

(13)『電源を遮断し自らロックアウト』
(14)自ら検電器で確認
(15)絶縁用保護具を着用

感電災害を防ぐには、分電盤などの充電部に近づく前に、必ず主電源を遮断し、第三者が電源を入れないよう施錠してロックアウトします。また自分が作業をしていることなどを知らせる札をかけるタグアウトも有効です。そして充電部に触れる前に、自ら検電器で確認することも重要です。

作業者は絶縁用保護具を着用するほかアクセサリーやキーホルダーなどの伝導性のあるものをすべて排除することも必要です。

高熱物(Fire)

(16)『着火前にプレパージ』(換気)
(17)失火時はガス供給を自動遮断させる
(18)ガス漏れチェックを行い、発見時は正しく処置

高熱物による爆発や火災は大きなリスクであり、特に爆発は火災のように火を消すといった事後対応がむずかしく、建物自体が吹き飛んでしまうこともあります。そのため、爆発の条件がそろわないようにすることがポイントです。

液体でも固体でも「酸素」がなければ爆発は生じません。そのためできるだけ酸素濃度を減らす「プレパージ」と、ガス検知器や自動ガス遮断装置などの気体が漏れない仕組みづくり、着火時は十分に注意する意識づけが重要です。

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まとめ

重大災害を未然に防ぐことは、企業にとって社会的責任を果たすと同時に、従業員の命と安全を守る最重要課題です。STOP6活動は、単なる安全対策にとどまらず、労働災害ゼロを目指す実践的な指針です。各現場の特性やリスクを考慮し、自社に適した対策を取り入れることで、より安全で効率的な職場環境を実現しましょう。

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