POINT

過労で倒れたら労災になる?
過労で倒れることは、一定の条件を満たした場合、労災として認められる可能性があります。
具体的には、仕事での過度な負担が原因となり脳や心臓、精神への疾患が発生したと関連性が認められた場合、労災認定の対象となります。

過労による労災の現状は?
2025年(令和6年)の過労死等に関する請求件数は、4,810件と前年度比212件増加し、決定件数及び死亡・自殺(未遂を含む)件数も前年度比増加傾向にあります。

過労による労災を防ぐためには
企業が過労による労災を防ぐためには、従業員の健康を守るために快適な職場環境の実現と労働条件の改善を実施する必要があります。具体的には長時間労働の削減や健康管理の徹底、メンタルヘルスケアの推進など、日頃から予防策を徹底することが重要です。

近年、過労死などの過労による労働災害の発生状況が深刻化しており、事業者は早急に対応策を実施していく必要があります。今回は、過労死等の定義や過労による労災の現状と共に、過労による労災を防ぐ企業が取り組むべき対策をご紹介します。

 

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過労死等とは?防止策の推進状況

まずは国が定義する「過労死等」の意味と、関連法、厚生労働省が主導する国の取り組みを見ていきましょう。

過労死等とは

過労死等とは、仕事での過度な負担から生じる脳や心臓の病気、または仕事上の強い心理的ストレスが原因となる精神障害による死亡、またはこれらの病気のことを指します。

なお、過労死等防止対策推進法第2条で次のように定義されています。

・業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
・業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
・死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

出典:厚生労働省「過労死等防止対策」

過労死等と長時間労働との関係

長時間にわたる過重労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられており、脳・心臓疾患との関連性が強いとの医学的知見が得られています。

厚生労働省によれば、週40時間を超える時間外・休日労働時間が、月合計で45時間を超えて長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まるとされています。

「過労死等防止対策推進法」について

2014年(平成26年)11月に、過労死等の防止のための対策を推進するため「過労死等防止対策推進法」が施行されました。

過労死等防止対策推進法では、「過労死等の防止のための対策を推進することで、過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与すること」を目指しています。また、過労死等防止対策を効果的に実施するため、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を定めています。この大綱では以後3年間の取り組みを定めるものであり、3年ごとに見直しが図られます。

最新の見直しは2024年8月に行われ、時間外労働の上限規制の遵守の徹底や再発防止指導の強化、フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行後の履行確保、個人事業者等の安全衛生対策・健康管理の強化などが追加されました。

過労死が発生した際に企業が負う損害賠償責任と法的リスク

過労死や過労によるメンタル不調などの労働災害が発生した場合、企業は労災保険からの給付とは別に、従業員やその遺族から多額の損害賠償を請求されるリスクを抱えています。労働契約法において、企業は従業員が安全かつ健康に働くことができるよう配慮する義務が定められています。長時間労働の放置やハラスメントの看過などは、この安全配慮義務の違反とみなされる可能性が高く、過去の裁判例では企業に対して数千万円から1億円を超える賠償支払いが命じられたケースも少なくありません。

法的責任に加えて、社会的信用の失墜も企業に甚大な影響を及ぼします。過労死を発生させた事実が報道やインターネットを通じて広く認知されることで、企業ブランドの価値は大きく低下します。その結果、取引先からの信頼を失い業績が悪化するだけでなく、既存社員の離職や新規採用の難航に直結します。労働基準監督署による指導や書類送検の対象となる事態も想定されます。企業が持続的に成長するためには、これらの重大なリスクを正しく認識し、従業員の命と健康を守るための予防体制を整えることが不可欠です。

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過労による労災の現状

過労による労災がどの程度発生しているのか、統計データで確認してみましょう。

過労死等の労災補償状況

過労死等の現状は、最新の労災請求や支給決定件数より知ることができます。
2024年度(令和6年度)「過労死等の労災補償状況」では、下記の結果となっています。

1.過労死等に関する労災補償状況

請求件数:4,810件(前年:+212件 )
・支給決定件数:1,304件(前年:+196件)
┗うち死亡・自殺(未遂を含む)件数:159件(前年:+21件)

2.業務災害に係る脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

請求件数:1,030件(前年:+7件)
┗うち死亡・自殺(未遂を含む)件数:255件(前年:+8件)

請求件数を業種別でみると、「運輸業、郵便業」213件、「卸売業、小売業」150件、「建設業」128件の順で多く、職種別でみると「輸送・機械運転従事者」177件、「専門的・技術的職業従事者」149件、「サービス職業従事者」136件の順で多く、肉体労働が多い業種・業界で発生率が高い傾向にございます。
また、年齢別では、「50~59歳」411件、「60歳以上」348件、「40~49歳」213件の順で多く、比較的高齢労働者で過労による労災請求が実施されている状況です。

3.業務災害に係る精神障害に関する事案の労災補償状況

請求件数:3,780件(前年:+205件 )
┗うち死亡・自殺(未遂を含む)件数:202件(前年:-10件)

請求件数を業種別でみると、「医療・福祉」982件、「製造業」583件、「卸売業、小売業」545件の順で多く、
職種別でみると「専門的・技術的職業従事者」1,030件、「事務従事者」796件、「サービス職業従事者」556件の順で多く、比較的顧客対応が多い業種業界での発生が多い傾向にございます。
また、年齢別では、「40~49歳」1,041件、「30~39歳」889件、「50~59歳」870件の順で多く、2と比較すると年齢層が若干若い層にて労災請求が実施されている状況です。

出典:厚生労働省「令和6年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」

過労死認定の基準「過労死ライン」の見直しについて

労災補償において、過労死と労災認定される時間外労働時間が規定されています。その認定ラインによって過労死かどうかが判定されます。そのラインを「過労死ライン」と呼びます。

つまり「過労死ライン」とは、健康障害に発展する恐れのある時間外労働時間数を分けるラインです。

・「脳・心臓疾患」の労災認定基準が2020年5月に改定

2021年9月に、過労死のうち、「脳・心臓疾患」の労災認定基準が改正されました。
改正前は、脳・心臓疾患の発症前1ヶ月におおむね100時間または発症前2か月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合について、業務と発症との関係が強いと評価していました。
改正後は、改正前に設定されていた時間に至らなかった場合も、これに近い時間外労働を行った場合には、「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮した上で、業務と発症との関係が強いと評価できることを明確にしました。

・労働時間以外の負荷要因の見直し

労働時間以外の負荷要因については、新たな項目が追加されました。
「勤務時間の不規則性」に関しては、既存の「拘束時間の長い勤務」と「不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務」に加えて、休日のない連続勤務と勤務間インターバルが短い勤務が追加されました。また、「心理的負荷を伴う業務」と「身体的負荷を伴う業務」が追加されました。

①労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化

業務と発症との
関連性が強いと評価
改正前 発症前1か月間に100時間または2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働の水準には至らないがこれに近い時間外労働
改正後 上記+「一定の労働時間の負荷要因」も
十分に考慮

②長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直し

労働時間以外の
負荷要因
勤務時間の不規則性 拘束時間の長い勤務
休日のない連続勤務
勤務間インターバルが短い勤務
不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務
事業場外における移動を伴う業務 出張の多い業務
その他事業場外における移動を伴う業務
心理的負荷を伴う業務
身体的負荷を伴う業務
作業環境 温度環境
騒音

・業務と発症との関連性が強いと判断できる場合の明確化

業務と発症との関連性が強いと判断できる場合として、短期間の過重業務と異常な出来事の例が明示されました。

-短期間の過重業務の例:発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合など
-異常な出来事の例:業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合など

短期間の過重業務 発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合
発症前おおむね1週間継続して、深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど 過度の長時間労働が認められる場合
業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合
異常な出来事 事故の発生に伴って著しい身体的、精神的負荷のかかる救助活動や事故処理に携わった場合
生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルを体験した場合
著しい身体的負荷を伴う消火作業、人力での除雪作業、身体訓練、走行等を行った場合
著しく暑熱な作業環境下で水分補給が阻害される状態や著しく寒冷な作業環境下での作業、温度差のある場所への頻回な出入りを行った場合

・脳・心臓疾患の対象疾病に「重篤な心不全」を追加

従来は不整脈が一義的な原因となった心不全症状などは、対象疾病の「心停止(心臓性突然死を含む)」に含めて取り扱っていましたが、改正後は、心不全は心停止とは異なる病態のため、新たな対象疾病として「重篤な心不全」が追加されました。「重篤な心不全」には、不整脈によるものも含んでいます。

出典:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」

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過労による労災を防ぐ事業主が取り組むべき対策

過労による労災を防ぐ事業主が取り組むべき対策として、厚生労働省が示していることを、わかりやすく解説します。

労働基準・労働安全衛生に関する法令の遵守が前提

過労死や労働災害を防ぐ取り組みの第一歩は、関係法令の厳格な遵守です。事業主には労働契約法(第5条)に基づき、労働者の生命と健康を守る「安全配慮義務」が課されており、労働基準法や労働安全衛生法などを通じて具体的な履行基準が定められています。

まず、時間外労働を行う際には36協定の適切な締結と届出が必須です。あわせて労働時間の上限規制を遵守し、原則として月45時間・年360時間以内に抑える必要があります。特別条項を適用する場合であっても、年720時間以内(時間外労働のみ)、単月100時間未満、複数月平均80時間以内(いずれも休日労働を含む)といった上限を超えてはなりません。詳しくは厚生労働省解説サイトをご参照ください。
参照:厚生労働省「スタートアップ労働条件」

さらに、労働安全衛生法により、事業主には従業員の労働時間を客観的な記録によって正確に把握することが義務付けられています。自己申告のみに頼った勤怠管理は実態との乖離を生みやすいため、タイムカードやパソコンのログイン・ログアウト履歴など、客観的なデータを用いた管理体制を整える必要があります。

あわせて、長時間労働者に対する医師の面接指導も重要な法的義務です。時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が従業員から申出があった場合は、速やかに医師による面接指導を実施しなければなりません。事業主は面接指導を行った医師から意見を聴取し、必要に応じて就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮といった事後措置を講じる義務があります。

心理的安全性の向上による隠れ残業とメンタル不調の防止

具体的な防止策を進める上で実効性を左右する土台となるのが、職場における心理的安全性の向上です。心理的安全性とは、従業員が自身の意見や抱えている問題を不安なく発言できる職場環境を指します。

この環境が十分に整っていない組織では、上司に業務量の過多を相談できず、タイムカード打刻後に業務を続ける隠れ残業や、自宅への持ち帰り残業が発生しやすくなります。表面上の労働時間が縮小して見えても、実態として過重労働が常態化し、従業員がメンタル不調を一人で抱え込んでしまう事態に陥りかねません。さらに、心理的安全性が低い職場環境そのものが慢性的なストレス要因となり、対人関係の緊張や孤立感から心身に継続的な負荷を与えます。長時間労働による肉体的な疲労に加え、こうした精神的ストレスが重なることで、心身の不調を引き起こすリスクがより一層高まります。

これを防ぐためには、日頃からミスや進捗の遅れを一方的に責めるのではなく、組織全体で解決策を模索するマネジメント姿勢の浸透が必要です。定期的な面談や日々の声かけを通じて、業務の進捗状況や体調に関する相談をしやすい環境を構築することが効果を発揮します。従業員が疲労やストレスの蓄積を早期に申告できるようになれば、管理職や人事担当者も適切なタイミングで業務量の再配分や休養の指示を出すことができます。風通しの良い職場環境を構築することは、隠れ残業の防止だけでなく、組織全体の生産性向上にもつながります。

具体的な防止策

法令の遵守と心理的安全性の確保という土台を踏まえた上で、企業は以下のような具体的かつ実効性のある防止策を総合的に推進していく必要があります。

・労働時間の適正管理と業務配分の見直し

時間外労働の上限を設定するだけでなく、業務の属人化を解消し、業務プロセスそのものを効率化する取り組みが必要です。業務の可視化を行い、特定従業員へ負荷が偏っている場合は、チーム内でのタスク再分配や人員配置の変更を柔軟に行います。また、ノー残業デーの導入や勤務間インターバル制度の検討など、物理的に十分な休息時間を確保できる仕組みの構築も有効です。

・年次有給休暇の取得促進と働き方の見直し

ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、年次有給休暇の計画的な取得を推進します。年5日の取得義務を確実に履行することはもちろん、連続休暇の取得を奨励する制度を整えることが望まれます。また、フレックスタイム制など従業員の生活環境に配慮した柔軟な働き方を導入することも、疲労回復やストレス軽減に寄与します。

・職場におけるメンタルヘルス対策とラインケアの強化

メンタルヘルス対策を推進するため、年に1回のストレスチェックを確実に実施し、高ストレス者へのフォロー体制を整えます。あわせて重要となるのが、現場の管理職によるラインケアです。管理職に対して研修を実施し、部下の行動や表情の変化、遅刻や早退の増加などのサインを早期に発見できるスキルを身に付けさせます。従業員自身がセルフケアを行う風土づくりと並行して、組織的サポートを強化することが重要です。

・パワーハラスメントの予防と早期解決

パワハラをはじめとする職場内のハラスメントは、精神障害による労災認定の大きな要因となります。パワハラ防止法に基づき、事業主からのトップメッセージとしてハラスメントを許容しない方針を社内外へ明示するとともに、全従業員を対象としたハラスメント研修を定期開催します。また、相談者が不利益を被らないよう不利益取扱いの禁止を明記し、プライバシーや安全性が厳守される体制を整えることが求められます。

・相談体制の整備と産業保健スタッフとの連携

社内の人事や上司には相談しにくい悩みを受け止めるため、社外の専門機関や従業員支援プログラムを活用した外部相談窓口の整備が推奨されます。また、産業医や保健師といった産業保健スタッフとの連携を強化し、健康診断やストレスチェックの結果に基づき、早期に専門的なアドバイスを受けられる体制を構築します。

・疲労蓄積度自己診断チェックリストなどのセルフチェックツールの活用

厚生労働省が提供している疲労蓄積度自己診断チェックリストなどを定期的に配布し、従業員自身が自分の疲労度合いや健康状態を客観的に把握できる機会を提供します。また、管理職が部下の疲労度を推しはかるための家族用や管理者用チェックリストも併せて活用することで、周囲からの早期発見と介入が可能となります。

・継続的な従業員教育・研修の実施

過労死や労働災害を防止するための各種対策を現場で機能させるには、従業員一人ひとりが労務環境や過労に関する正しい知識を身につけることが欠かせません。セルフケアや不調時の相談フローに関する教育を定期的に実施する必要があります。さらに、これらの教育は一度きりで終わらせず、法改正や社内ルールの変更に合わせて継続的にアップデートしていくことが重要です。こうした研修を行うことで、より相談しやすい・組織で時間外労働に対応する環境が形成され、組織全体の意識を底上げすることができます。

参考:厚生労働省「STOP!過労死」

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まとめ

過労死等の労働災害が増加している現状を踏まえると、企業は従業員の健康を守るための対策を今まで以上に重視する必要があります。長時間労働の削減や健康管理の徹底、メンタルヘルスケアの推進など、日頃から予防策を徹底することが求められるのではないでしょうか。

労働環境の多様化が進む中で、安全衛生教育を効率的かつ効果的に実施することは、すべての企業にとって重要な課題です。従業員が必要な知識を身につけ、職場での安全を確保するための新たなツールとして、「LaKeel Online Media Service」がおすすめです。
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