食品製造業に従事する方々にとって、食品の安全を確保し、消費者が安心して食品を利用できるようにするためには、食の安全を適切に管理することが重要です。
そのために、食品業界ではHACCPやISO22000、FSSC22000といった食品衛生管理手法や、それにマネジメントシステムを取り入れた認証規格が存在します。
今回はHACCPにマネジメントシステムを取り入れた認証規格であるISO22000の基本的なことから、認証を取得するメリット、要求事項、取得する手順ついての概要をご紹介します。
HACCPとISO22000、FSSC22000の違いについて
食品の安全管理は、食品製造業界において最も重要な要素の一つです。消費者の信頼と健康を守るためには、製造現場の衛生管理に主眼をおいたHACCPと製造現場以外の関係部署やステークホルダーも含めたマネジメントシステムを追加したISO22000、FSSC22000といった国際的な認証規格の理解と適用が不可欠です。これらの規格基準は、食品の安全性を保証するために設計されていますが、それぞれに特徴と違いがあります。HACCP、ISO22000、FSSC22000のそれぞれにどのような違いがあるのかご紹介します。
HACCPとは?
HACCP(ハサップ)とは、衛生管理の手法で、「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略称です。食品を取り扱う事業者などが、自ら食中毒菌汚染や異物混入といった「危害要因(ハザード)」を把握し、全工程の中で危害要因を除去、または低減させるために管理することで、製品の安全性を確保することができます。
この手法は、国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格 (コーデックス) 委員会が発表したもので、国際的に統一された規格で、各国にその採用を推奨しており、日本でも2021年6月からは「HACCP完全義務化」が全ての食品関連事業者に求められるようになりました。
ISO22000とは?
ISO22000とは食品安全マネジメントシステムに関する国際規格です。
ISOとは、国際標準化機構「International Organization for Standardization」の略称で、スイスのジュネーブに本部がある非政府組織です。国際的な取引をスムーズにするために複数の規格を制定しており、製品そのものを対象とする「モノ規格」や、組織の品質活動や環境活動を管理するための仕組みであるマネジメントシステムについての「マネジメントシステム規格」があります。
ISO22000はISOのマネジメント規格の一種であり、食品安全に関わる内容となっています。
HACCPの食品衛生管理手法の内容をすべて含み、それをもとに食品安全のリスクを低減するマネジメントシステムの要素が加味されています。この規格に従うことにより、安全なフードサプライチェーンの展開を実現することができます。
FSSC22000とは?
FSSC22000は、国際的に認められた食品安全マジメントシステムで、別の規格であるISO22000をベースにしつつ、PRP(前提条件プログラム)の要求事項「ISO/TS22002-1またはISO/TS22002-4」及び「FSSC独自の追加要求事項」が統合された国際規格です。
これにより、FSSC22000は食品安全管理におけるより包括的で厳格なアプローチを提供し、世界中の多くの食品製造業者に採用されています。なお、FSSCはFood Safety System Certification(食品安全システム認証)の頭文字をとった略称です。
FSSC22000は、世界で食品安全規格を統⼀し、フードサプライチェーンにおける、食品安全の確保や継続的改善を目指すために設立された非営利団体G F S I(Global Food Safety Initiative)により承認された食品安全の認証スキームとなっており、FSSC22000の取得は、食品安全に対する厳しい要求に対応し、持続可能な食品供給システムの構築を支援するための重要な要素に位置付けられています。
JFS-C規格について
HACCPやISO22000、FSSC22000の違いについて説明してきましたが、日本で生まれたJFS-C規格も忘れてはいけません。
日本発の規格であるJFS-C規格は、ISO22000やFSSC22000といった国際規格と比較して、現場からの改善提案を活用する点と認証範囲に違いがあります。JFS-C規格はHACCPとISO22000の要素を含みますが、ISO22000やFSSC22000と比べて認証範囲が狭くなっています。JFS規格は、日本語で作成されているため、日本人にとって理解しやすく、現場でもわかりやすい点が大きな特徴です。
ISO22000の認証を取得するメリット
最近の食品マネジメントシステムでは、FSSC22000が主流となっています。これは、FSSC22000が食品安全規格として高い信頼度と認知度を持つためです。しかし、FSSC22000が要求する安全基準は非常に高く、認証を取得するためには多くのハードルが存在します。一方で、ISO22000も認証を取得するためにはさまざまな要件を満たす必要がありますが、FSSC22000と比較すると取得のハードルは相対的に低いと言えます。このため、ISO22000の認証取得に対する需要は大きいです。
食品事業者がISO22000の認証を取得することには、多くのメリットが期待できますのでご紹介します。
・食品安全リスクの低減
食品事業者にとって自社商品である食品の安全リスクは常に大きな懸念事項です。そのリスクを低減することは、ビジネスを進めるに当たって、大きなメリットが期待できます。
・業務効率化や組織体制の強化
適切な衛生管理手法が浸透することで、結果的に業務効率化や組織体制の強化につながります。
・業務の可視化と社内教育の円滑化
ISO22000に則った、徹底した衛生管理などの手法は、規定通りに進められることで、あらゆる業務が可視化されることになります。マニュアル化や業務標準化につながることから、業務の引き継ぎや社内教育が容易に行えるようになります。
・企業価値の向上
ISO22000認証取得は、対外的に安全性やリスク管理の徹底をアピールできるため、企業価値の向上に寄与するでしょう。
・法令順守(コンプライアンス)の推進
企業として、ISO22000認証の取得は倫理違反や法令違反の予防、そして万が一のことがあった際の予防策を準備することにもつながります。
・海外企業を含む取引要件を満たせる
海外企業との国際的な取引を行う際に求められる食品衛生基準を満たすために、ISO22000認証取得は大きな意味を持つと考えられます。
ISO22000の要求事項
要求事項とは、ISO22000の規格において企業が実現すべき基本的な要件のことを言います。ISO22000の取得するためには、この要求事項の要件を満たす必要があり、規格に適合しているかどうか評価を受けることで、規格の認証が行われます。
ISO22000の要求事項は、主に次のものとなっています。概要を解説します。
適用範囲
フードチェーン内にある組織が、食品安全ハザードを管理する能力を持つことを実証する必要がある場合に、組織が使う要求事項を規定しています。
食品安全に関する法令・規制要求事項への適合を実証する際や、顧客からの要求事項への適合性を実証する際など多くの場面に適用できるとされています。
各項目
・組織の状況
組織やその状況の理解、利害関係者のニーズや期待の理解、食品安全マネジメントシステムの適用範囲の決定などが求められます。
・リーダーシップ
リーダーシップやコミットメント、方針、組織の役割、責任や権限などの決定が求められます。
・計画
リスクや機会への取り組み、食品安全マネジメントシステムの目標と達成のための計画策定などが求められます。
・支援
計画を達成するための支援として、資源(ヒト・モノ・カネ)と力量(能力・スキル)を確保し、認識(情報伝達)、コミュニケーション(情報共有)、情報の文書化の取り組みが求められます。
・運用
運用の計画と管理、前提条件プログラム、トレーサビリティプログラムなど複数の運用プログラムなどの運用が求められます。
・パフォーマンス評価
モニタリングや測定、分析、評価、内部監査、マネジメントレビューなどのパフォーマンス評価が求められます。
・改善
不適合の場合の是正処置とともに継続的改善、食品安全マネジメントシステムの更新などが求められます。
ISO22000の認証を取得する手順
これからISO22000取得を考えている場合、認証取得に向けた手順を知りたいと思う人は多いのではないでしょうか?
ここでは、ISO22000の認証を取得するための手順を簡単にご紹介します。
取得の流れ
まずISO22000の認証を取得するには、審査を受けるまでに食品安全マネジメントシステムを構築・運用する必要があります。その後、認証の審査を受け、規格への適合性が認められると、ISO45001を取得することができます。
ISO22000の認証を取得するには、一般的に次のような手順を踏みます。
システム構築~運用まで
・指針の策定、適用範囲の決定
・食品安全マネジメントシステム構築
・スケジュール策定
・手順書作成・人材教育
・事務局など体制確立
・食品安全マネジメントシステム運用
・記録・分析・評価
・食品安全マネジメントシステム見直し
審査~認証取得まで
・認証審査申請書の提出
・基本契約締結・審査料支払い
・審査(数回、現地審査含む)
・是正処置の報告
・登録証の授与
まず自社における指針と適用範囲を明確にし、食品安全マネジメントシステムを構築します。そして運用をするためにスケジュール策定や手順書の作成、社内の人材教育、体制づくりなどを行った上で運用を始めます。
食品安全マネジメントシステムを運用しながら評価を行い、問題点を改善した上で、審査を受けるために認証審査申請書を認証機関に提出します。
審査は現調査も含めて数回にわたって行われ、何か改善すべきことがあれば是正処置を行い、報告した後、認証登録が可能になります。
まとめ
ISO22000の認証取得を目指し行動することは、食品事業者にとって意味のある食品安全マネジメントシステムの運用を継続的に行う仕組みを作ることができます。
先述の通り、ISO22000を取得するための要求事項「支援」の中には「力量」があり、これは危険源の特定やリスクの対処を適切に行うために必要な知識、技能を得るための教育訓練などを実施することで、必要な力量を付与することを求められています。つまり、食品衛生に関する全般的なスキルを身に付けるために教育・研修が重要と言えるでしょう。
近年は、社員などの人材の個人が持つ知識や技能、能力、資質などの付加価値を生み出す資本を「人的資本」と呼び、重要視する考え方が浸透しつつあります。人的資本として育成していくためにも、教育・研修はより重要度を増しています。
食品安全衛生にまつわる教育ツールとしておすすめなのが、ラキールの「LaKeel Online Media Service」です。食品衛生などに関するアニメーションによる教育動画を500本以上提供しており、学ぶ意欲のない従業員でも興味が沸くよう工夫されているため、学びやすく理解しやすい内容となっている従業員教育サービスです。
サンプル動画がございますので、アニメーションの教育動画による学びやすさ理解しやすさを、ぜひ一度体感してみてください。
サンプルムービー
再生する(無料視聴申し込み)
また、反復性もあるため、知識の定着や行動変容を促進し、教育効果が得られやすいという特長があります。
知識定着のための手段として、「LaKeel Online Media Service」をぜひご活用ください。
詳細は、サービス紹介ページをご覧ください。