食品衛生責任者は、食品衛生への配慮が必要な施設において、重要な役割を担います。食品衛生責任者とはどのような役割を担うのか、資格取得のメリット、対象者、取得方法をご紹介します。

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食品衛生責任者とは

食品衛生責任者とは、食品衛生法に定められた規則に従って、施設において衛生管理の中心の役割を担う、食品衛生責任者資格を持つ人のことを指します。

この食品衛生責任者は、食品衛生法施行規則別表第17で、「食品衛生法(以下「法」という。)第51条第1項に規定する営業を行う者(法第68条第3項において準用する場合を含む。以下「営業者」という。)は、食品衛生責任者を定めること。ただし、食品衛生法施行規則(以下「規則」という。)第66条の2第4項各号に規定する営業者についてはこの限りではない。」と定められており、食品衛生法に基づく許可や届出により営業を行う食品取扱施設に設置が義務付けられています。

具体的な役割は、食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)の7にて以下のように記載されています。

  • (2)食品衛生責任者は、都道府県知事、指定都市長及び中核市長(以下「知事等」という。)が行う講習会又は知事等が適正と認めた講習会を定期的に受講し、常に食品衛生に関する新しい知見の習得に努めること。
  • (3)食品衛生責任者は、営業者の指示に従い、衛生管理にあたること。
  • (4)食品衛生責任者は、食品衛生上の危害の発生防止のため、施設の衛生管理の方法や食品衛生に関する事項について必要な注意を行うとともに営業者に対し意見を述べるよう努めること。
  • (5)営業者は、(4)の規定による食品衛生責任者の意見を尊重すること。

このように、食品衛生責任者は衛生管理において重要な役割を担っているのです。

食品衛生法の改正によって、令和3年6月1日から、原則として許可や届出の対象となるすべての施設では食品衛生責任者の設置が必要となりました。

また食品衛生責任者は、フォローアップのための講習会を定期的に受講し、新たな知見の習得に努めることも必要です。

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食品衛生責任者と食品衛生管理者の違い

「食品衛生責任者」と「食品衛生管理者」は名称が似ていますが、全く違う資格です。
食品衛生管理者は、肉や魚、乳などの特に衛生上の考慮が必要な食品の製造や加工をする工場で必要となる資格です。
食品衛生法第48条の規定で「製造又は加工の過程において特に衛生上の考慮を必要とする食品又は添加物であって、食品衛生法施行令で定めるものの製造又は加工を行う営業者は、その製造又は加工を衛生的に管理させるため、その施設ごとに、専任の食品衛生管理者を置かなければならないこと。」と定められています。

食品衛生責任者は講習を受ければ誰でも取得できる資格ですが、食品衛生管理者はより難易度の高い資格で、厚生労働省が管轄する国家資格です。
そのため、資格を取得できる人も限られています。

食品衛生責任者の資格取得で得られる知識とメリット

各施設に設置が義務付けられている、食品衛生責任者ですが、この資格を取得し、知識が身に付くことで、次のようなメリットが得られることができます。

●食品衛生法に則ることができる

食品衛生責任者は、食品衛生法に定められた営業施設ごとに配置することが義務であるため、適任者に資格を取得させて配置することで、食品衛生法に則ることができます。

●HACCPに沿った衛生管理が適切に運用される

食品衛生法の改正では、HACCPに沿った衛生管理も義務付けられました。食品衛生責任者の資格取得により、その運用も可能になります。

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●施設の衛生管理計画の策定と運用が円滑になる

食品衛生責任者の役割である施設の衛生管理計画の策定と運用が適切に行われます。

食品衛生責任者の資格取得の対象者と資格要件

食品衛生責任者の資格取得の対象者は、すべての営業者となります。

また、資格要件としては、次のいずれかに該当する人と定められています。

  • 1.食品衛生監視員または食品衛生管理者の資格要件を満たす人
  • 2.調理師、製菓衛生師、栄養士、船舶料理士と畜場法に規定する衛生管理責任者または作業衛生責任者、食鳥検査法に規定する食鳥処理衛生管理者の資格を有する人
  • 3.都道府県知事等が行うまたは適正と認める講習会を受講した人

食品衛生責任者の資格の取得方法

食品衛生責任者の資格を取得する方法を確認しておきましょう。先述の資格要件の1と2の人はそのまま食品衛生責任者になることができます。

それ以外の人は、各都道県知事等が実施する食品衛生責任者の養成講習会を受けます。対象者であれば、誰でも受講することができ、資格を取得することができます。

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例えば、東京都では一般社団法人東京都食品衛生協会が、東京都知事の認定を受けて、養成講習会を実施しています。会場集合型養成講習会とeラーニング型養成講習会があり、会場集合型では一日の講習を受けることで資格が取得できます。eラーニング型ではオンラインで資格が取得できます。

※記載内容は2023年3月時点の情報となります。
東京都の場合の受講内容は以下の通りです。

1.食品衛生学(2.5時間)
■主要な食中毒、健康被害及び食品事故並びにその原因(微生物、自然毒、化学物質・汚染物質、異物等)
■食中毒等の発生を防止するための基本的な対応
・施設・設備の衛生管理(5S(整理、整頓、清掃、清潔、習慣)を含む。)
・基本的な食品の取扱い(食中毒予防の3原則を含む。)
・食品取扱者等の衛生管理(感染症の予防対策を含む。)など

2.食品衛生法(3時間)
■食品衛生法の全体像
■自主的な衛生管理に関すること
営業者の責務(衛生管理計画及び手順書の作成、食品取扱者等への周知、衛生管理の実施状況の記録及びその保存並びに衛生管理の検証)
一般衛生管理及びHACCPに沿った衛生管理の基準
小規模事業者等による手引書の活用方法 等
■自主回収報告制度に関すること
■営業規制に関すること(許可、届出、施設基準)
■その他食品衛生関連法規に関すること など

3.公衆衛生学(0.5時間)
■環境衛生
■労働衛生 など

4.確認試験
■講義の理解度及び知識の定着度を確認するための試験

講習会を修了することで、修了証書が交付されます。

また、食品衛生責任者を変更する際は、新しく食品衛生責任者の資格証明書を持って、保健所に食品衛生責任者変更届を提出する必要があります。

食品衛生責任者の有効期限や更新の有無

食品衛生責任者には有効期限がありません。そのため、更新手続きなどもないので一度取得すればずっと有効な資格です。

ですが、食品衛生法で「食品等事業者は、自らの責任において、販売食品等の安全性を確保するための知識の習得等に努めなければならない」と定められている通り、各自治体では定期的な新たな知見の習得のために「食品衛生責任者実務者講習会」という食品衛生責任者を対象として講習会を開催しています。そのため営業者は食品衛生責任者にこの講習会を受講させることが推奨されています。

適切な衛生管理を行うためにも、食品衛生責任者実務者講習会には参加することが望ましいです。

まとめ

食品衛生責任者は、食品を取り扱う施設において食品衛生の重要な役割を担っています。

食品衛生責任者は資格を取って終わりではなく、資格保有者としての役割を果たすために、日々学習を継続し、現場で実践する必要があります。場合によっては、食品衛生教育の先導役として他従業員に対する指導も求められるかもしれません。これらを実践することによって、食品衛生に限らない職場環境全体の改善に大きく貢献できるでしょう。

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